顎が引っ込んでるのは治せる?原因や放置のデメリット・治療法を紹介
下顎が引っ込んでいる『下顎後退症』は顎変形症の1つで、インターネット上では『顎なし』と表現されています。
見た目だけじゃなく、噛み合わせが悪い、いびきをかくなど、放っておくと身体にさまざまな影響を及ぼします。
この記事では、下顎後退症の特徴や原因、デメリットや治療法などを紹介します。
健康保険適用で治療が受けられるかもしれない症状のため、正しい診断名を受けるためのポイントも紹介します。ぜひ参考にしてください。
下顎後退症の特徴
下顎後退症とは、下顎が通常よりも後ろに位置している状態を指します。一般的には“顎がない”と表現されることもあります。
下顎後退症の特徴は以下です。
- 横から見ると顎がない
- 口が閉じにくい
- 食べ物が噛めない
- いびきをかく
- 正確に発音できない
- 顎周辺が痛む
下顎が後退しているため上下の歯が噛み合わず、横顔を見ると下顎のラインがはっきりしない印象です。
重度になると、口を閉じた際に上の前歯の後方に下の前歯が隠れてしまう『過蓋咬合』になります。
不正咬合の1つのため、これらを治療せずに放置すると症状が進行し、見た目だけでなく健康面のリスクが高まっていくため、早めの対応が必要です。
下顎後退症の原因
下顎後退症の発症についてはいくつか考えられる原因があります。
現時点で考え得る、関連しているとされる原因を紹介します。
口呼吸
口呼吸は、下顎が後退する原因の1つです。
口呼吸が習慣化すると、口を閉じる力が低下し、下顎の成長が阻害されてしまいます。
その結果、上顎と下顎とで成長に差が生じ、下顎後退を引き起こします。
また、口呼吸をしていると下顎が後ろに引っ込む傾向があることなども、下顎後退症をより進行させる原因です。
アデノイド顔貌(がんぼう)
アデノイド顔貌とは、アデノイド肥大が引き起こす独特の顔の特徴のことです。
口元が突出して見える、顎と首の境目が分かりにくいなど、下顎後退症のような顔つきをしています。
アデノイドとは鼻の奥、喉の上の方にある咽頭扁桃のことで、2歳くらいから徐々に大きくなり、5~6歳頃にピークを迎え、その後徐々に小さくなるのが普通です。
しかしアデノイド肥大は鼻腔が狭くなって鼻呼吸がしづらくなるため、中には口呼吸が日常化してアデノイド顔貌を引き起こす人もいます。
アデノイド顔貌と下顎後退症は、いずれも下顎が後退して見える点が共通していますが、アデノイド顔貌はガミースマイルや面長といった特徴があり、原因も異なります。
口腔習癖
幼児期の指しゃぶり、舌突出癖(ぜつとっしゅつへき:舌を前に押し出す癖)のような口腔習癖は下顎後退症の原因として考えられます。
指しゃぶりは指を吸う動作が下顎を後方に押し込むため、下顎の発達が遅れてしまいます。
また、舌突出癖も指しゃぶりによってつく癖ですが、指しゃぶりが長く続いた人の場合、大人になっても舌突出癖として残る場合があります。
遺伝的要因
骨格である顎の骨の大きさや位置については遺伝によるものが多く、下顎後退症については顎の骨の発育不全が遺伝的要因です。
日本人は顎が小さいため、不正咬合になりやすいといわれています。
特に下顎の成長パターンは、顎の形状やサイズ・歯並びなど、遺伝の影響を強く受けると考えられています。
遺伝によって成長期に顎の骨の成長が抑制された場合、重度の下顎後退症となる場合があるため、外科手術と歯列矯正など、複合的な治療が行われます。
下顎後退症を放置するデメリット
下顎後退症は見た目が影響を受けるため、できれば治療をしたい人は多いでしょう。
しかし見た目を抜きにしても、放置しないほうがいい理由があります。
ここでは、下顎後退症を治療せずに放置するデメリットを紹介します。
噛み合わせの悪さによる不調
下顎後退症の場合、下顎が正常の位置より後退しているため、上下の歯の噛み合わせが悪く、以下のような問題が起こります。
- 前歯で噛めない
- 咀嚼に時間がかかる
- 歯がすり減る
- 口を閉じにくい
- 顎周辺が痛い
- 胃腸の不調
- 肩こりや頭痛など
- 正確に発音できない
- 顔貌が気になる
これらのデメリットは放置していても改善しません。顎関節症を発症する恐れもあります。
美容面にも健康面にも大きなリスクをもたらすため、早めに治療を開始して、リスクを抑えましょう。
睡眠時無呼吸症候群のリスク
下顎後退症の場合、睡眠時無呼吸症候群と関連があると考えられています。
いびきがうるさいと言われたり、寝ている最中に呼吸が止まると指摘されたりすることがある人は、命に係わる病気である睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
睡眠中に何度も息が止まると眠りが浅くなり、疲労を溜めて集中力の低下を招くため注意が必要です。
長く放置すると心臓や血管にも負担をかけるため、早めの対応が求められます。
顎関節症のリスク
下顎後退症のように、噛み合わせのズレによって顎の関節に負担をかけてしまう人の場合、顎関節症を発症する可能性があります。
顎関節症は、口を開け閉めするときに痛みがあったり、顎からカクカク音が鳴るなどの症状があり、悪化すると口の開きが悪くなり、会話や食事に支障が出ることがあります。
また、顎関節症は一度発症すると再発しやすく、完治もしにくくなるため、放置せずにしっかりと対応しなければいけません。
顔のコンプレックス
下顎後退症を放置していると顔の下半分が後退しているように感じる一方、上顎や上の歯が突出しているように見えます。
そのため、出っ歯や口ゴボに見える・表情がしまらないなど、気になるところが分かりやすく目立ってきます。
単なる見た目の問題ではなく、心理的な影響を考えると、自信喪失につながる前に早めに対応した方がいいでしょう。
虫歯や歯周病のリスク
下顎後退症は噛み合わせに問題がある症状のため、放置すると食べ物を咀嚼する能力が低下し、歯や顎に過度な負担をかけ続けます。
歯がすり減ったり歯根が後退したりするため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
また、口が閉じにくく口腔内が乾燥するようであれば、唾液による自浄作用の効果も得にくいため、歯磨きなどのセルフケアは重要です。
中耳炎・副鼻腔炎のリスク
アデノイド顔貌のリスクとして、中耳炎や副鼻腔炎があります。
アデノイドが肥大すると、アデノイドに存在する細菌が耳や副鼻腔に入り込んで炎症を起こしやすくなると言われています。
アデノイドは肥大化した程度では治療は必要ありませんが、中耳炎や副鼻腔炎を引き起こした場合は、それに対する治療が必要です。
下顎後退症の治療法
下顎後退症の治療は外科手術と矯正治療を組み合わせた治療が主体です。
矯正治療も可能ですが、抜歯が必要になるケースがほとんどです。
下顎後退症の治療法を紹介します。
健康保険が適用される場合がある
下顎後退症の治療は、骨切り手術を伴う・ワイヤー矯正に限るなどの一定の条件を満たすことで健康保険が適用される場合があります。
矯正治療は本来、審美目的で行われるため自由診療ですが、顎の上下左右の骨格のズレや変形によって噛み合わせに異常が生じている重度の場合、保険診療で受けられます。
重度の症状の一例として、顎変形症や上顎・下顎前突、上顎・下顎後退・開咬などがあります。
保険診療で下顎後退症の治療を行う際の条件は以下の通りです。
- 外科手術が必要な下顎後退症(顎変形症)と診断された
- 厚生労働省指定の『顎口腔機能診断施設』で治療を行う
- 矯正歯科での術前矯正を行う(術前矯正→外科手術→術後矯正の順に治療する)
- 外科手術を行う(骨切り手術)
- 外科手術を行う口腔外科または形成外科と、術前・術後矯正を行う矯正歯科の連携
- 矯正治療は表側矯正(ワイヤー矯正)のみ
- 治療途中で顎変形症と診断された場合は治療開始から
外科的手術(骨切り手術)と歯列矯正を併用した治療を『外科的矯正治療』といいます。
通常、歯列矯正は自由診療ですが、顎変形症と診断され、かつ厚生労働省指定の医療機関で外科手術を伴う治療を受ける場合に限り、健康保険が適用されます。
外科的手術と歯列矯正
下顎後退症の治療で、矯正治療だけでは不十分な場合、骨切り手術と歯列矯正を併用した外科的矯正治療を行います。
保険適用する場合はまず、手術後に噛み合わせが合うように術前矯正します。
噛み合わせが合うのは手術後のため、この時点では噛み合わせが悪くなっていきます。
下顎後退症に対して行われる骨切り手術の一例としては、下顎枝矢状分割術(かがくししじょうぶんかつじゅつ)があります。
エラ付近の骨を2枚に剥離するように分離し、下顎を前方に移動する手術で、さまざまな顎変形症に適応できる代表的な術式です。
外科的手術は全身麻酔で行われるため、ほとんどが入院したうえで行われます。
手術のあとは噛み合わせをしっかり調整するために、術後矯正を行います。
抜歯と歯列矯正
軽度の下顎後退症の治療では、基本的に上顎を後退させたり上の前歯を内側に倒したりすることを目標とした治療になるため、外科的手術をせずに歯列矯正のみでの治療を行うことが可能です。
歯列矯正を行う際、歯並びや噛み合わせを整えるために、歯を抜いてスペースを確保する治療が必要になる場合があります。
抜歯と歯列矯正を組み合わせた治療の場合、骨切り手術が必要ない軽度の症状の適応となるため、保険は適用されません。
自由診療となるため、保険適用時の条件を満たす必要がなく、自分にあった治療を自由に選択できます。
歯列矯正ではインビザラインの使用も可能
下顎後退症の治療を歯列矯正のみで行う場合は自由診療となり、保険診療の条件である表側矯正の条件を満たす必要がないため、インビザラインや裏側矯正の使用が可能です。
目立たずに歯列矯正をしたい人は、インビザラインや裏側矯正が選択できればストレスを感じずに済むでしょう。
特に裏側矯正は、下顎後退症の治療において出っ歯気味の上の歯に裏側から力をかけるため、効率的に歯を移動できます。
自由診療は費用がかかりますが、自分の都合に合う治療法を選択できるメリットがあります。
サージェリーファースト
『サージェリーファースト』は、外科的矯正治療が必要な症例に対して、術前矯正を行わずに最初から外科的手術を行える治療方法です。
術前矯正を行う場合、術前だけでも年単位での治療期間がかかります。
サージェリーファーストの場合、まず虫歯や歯周病などに対する口内環境を整える治療を行った後、先に外科手術を行います。
下顎後退症は気道が狭くなっていることが多いため、先に手術することで呼吸がしやすくなり、即効性のある見た目の改善も見込めます。
手術後に、仕上げとして歯並びを整える歯列矯正が行われます。
下顎後退症を正しく診断してもらうために
下顎後退症を適切に治療するには、矯正歯科や口腔外科医など専門家を受診し正確な診断をしてもらうことが重要です。
特に、保険診療で治療を受けるためには下顎後退症であるという診断が必要不可欠です。
下顎後退症を正しく診断してもらうために必要な検査は以下の通りです。
- 問診・視診
- レントゲン撮影・CTスキャンなど
- 必要に応じて歯型を取る・噛み合わせの精密な分析など
歯科医院の検査に対して怖いイメージがある人もいるでしょう。
下顎後退症の検査は画像撮影が主で、痛みを感じることはありません。
早めの治療を始めるためにも、気になる自覚症状がある場合は、まずは歯科医院を受診しましょう。
まとめ
不正咬合はどれも放置してはいけない症状ですが、下顎後退症は噛み合わせが機能しない・口が閉じにくい・睡眠時無呼吸症候群と関連があるなど、さまざまなリスクを伴います。
自然治癒するどころか、身体全体の健康面にもリスクをもたらすため、専門家による診断と治療が必要です。
矯正歯科・口腔ケア クリニック知事公館前は、下顎後退症を初めとする顎変形症に対して、保険診療を行う条件を満たしているクリニックです。
希望によって自由診療の治療も積極的に取り組んでおり、半透明で目立たないセラミックブラケットの取り扱いも追加費用なしで行っております。
「この顎って直せるのかな?」「きちんと噛めるようになりたい」とお悩みの方は、是非一度ご相談ください。
記事監修者

矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前
院長 三木 善樹
- 経歴
- 1993年 徳島大学歯学部卒業
- 1997年 徳島大学大学院歯学研究科修了
- 1997年 徳島大学歯学部矯正学講座助手
- 2004年 札幌医科大学医学部口腔外科学講座助手
- 2007年 札幌医科大学医学部口腔外科学講座助教
- 2022年 矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前院長
- 所属学会
- 日本矯正歯科学会・認定医
- 日本口腔外科学会
- 日本顎変形症学会
- 日本口蓋裂学会
- 日本顎関節学会
- 北海道矯正歯科学会
- 日本骨代謝学会
- 歯科臨床研修医指導医
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