矯正中の口内炎はなぜできる?原因・対処法・予防策を解説
矯正中の口内炎は、装置が粘膜にあたる「物理的な刺激」と、免疫力や栄養状態による「体の内側の要因」が重なって起こります。装置の種類で痛む場所は変わり、対処の優先順位も変わります。原因を見分けられると、自分でワックスで覆って様子を見るべきか、矯正歯科で装置を調整してもらうべきかを切り分けられます。
矯正中に口内炎ができる原因
矯正中の口内炎は、原因によって対処の方向が大きく変わります。装置の刺激が原因なら装置側を調整し、体調や栄養が引き金なら生活側を整える、という切り分けが必要です。代表的な2つのタイプを順に見ていきます。
装置が粘膜にあたって傷になる(カタル性口内炎)
矯正装置の角や端、ワイヤーの先端が頬の内側や唇の粘膜に繰り返しあたると、粘膜の表面が削られて赤く腫れます。これが「カタル性口内炎」と呼ばれるタイプで、矯正中にできる口内炎の多くはこちらに当てはまります。
カタル性口内炎の特徴は、装置があたっている特定の場所に集中してできることです。後述するアフタ性口内炎が口の中のあちこちに不規則にできるのと対照的で、ブラケットの位置や、調整後にワイヤーの端が長く出ている部分の真向かいに発生します。
物理的な刺激が原因なので、刺激の元を取り除けば改善に向かいます。
免疫力の低下や栄養不足が引き金になる(アフタ性口内炎)
もう1つのタイプが「アフタ性口内炎」で、こちらは装置の位置とは無関係にできます。直径数mm程度の円形の浅い潰瘍が、舌・頬の内側・唇の裏などに突然現れ、強い痛みを伴います。
アフタ性口内炎の原因は完全には解明されていません。機械的刺激・極端な疲労・ストレス・喫煙・薬物など多くの要因が関与し、栄養面では鉄・ビタミンB12・葉酸の不足が関わります。
矯正中の方にアフタ性口内炎ができやすいのは、装置の存在そのものが粘膜に小さな刺激を与え続けることに加えて、装置の違和感で食べる量や食事内容が偏り、栄養状態が乱れやすいためです。矯正を始めてから疲れたときに口内炎が増えたと感じる場合は、装置と全身のコンディションの両方が絡んでいることが多いです。
アフタ性口内炎は何もしなくても1〜2週間ほどで自然に治ります。ただし2週間以上たっても治らない、どんどん大きくなる、複数が同時にできて広がる、といった場合は、別の病気が隠れていることもあります。その場合は矯正歯科ではなく、口腔外科や歯科医院で診てもらうのが安心です。
装置の種類で口内炎のリスクはどう変わるか
口内炎ができる場所は、どの矯正装置を使うかによって変わります。装置の構造が異なれば、粘膜にあたる部位も変わるためです。代表的な3種類について、できやすい場所と特徴を整理します。
表側ワイヤー矯正:頬の内側・唇にできやすい
歯の表側にブラケットを貼り付けてワイヤーで固定する方式の矯正治療では、頬の内側と唇の裏に口内炎ができやすく、口を閉じたときにブラケットの突起が直接あたる位置に集中します。調整後にワイヤーの端が少し長く出ているときも、その先端が向かい合う粘膜を傷つけやすくなります。
装置の取り付け直後と毎月の調整直後は、口内炎ができやすいタイミングです。
裏側(舌側)矯正:舌にできやすい
歯の裏側にブラケットを貼り付ける方式の場合、口内炎ができやすいのは舌の側面と先端です。話したり食べたりするたびに舌が装置に触れるため、舌の粘膜が傷つきやすくなります。
舌は頬の内側よりも動く回数が多く、感覚も敏感な部位です。そのため、表側矯正と比べて慣れるまでに時間がかかる傾向があり、発音にも一時的な影響が出ます。舌側にワックスを貼っても食事や会話で剥がれやすく、対処の難易度は表側よりも高くなります。
マウスピース矯正:リスクは低いがゼロではない
マウスピース矯正は、歯列にフィットする薄い樹脂製のマウスピースを使用するため、ワイヤー矯正に比べて口内炎のリスクは低いです。金属の突起物がないぶん、粘膜を傷つける可能性が少ないことが理由です。
ただし、マウスピースの縁が歯茎にあたる場合や、歯の表面に接着するアタッチメント(樹脂の突起)が頬粘膜にこすれる場合には口内炎が起きることがあります。また、マウスピースを長時間装着していると口の中が乾燥しやすくなり、唾液による自浄作用が低下することで口内炎のリスクが高まる場合もあります。
口内炎ができたときの対処法
すでに口内炎ができてしまった場合、痛みを早く和らげながら、悪化させないことが目標になります。対処は「装置の刺激を止める→炎症を抑える→食事で悪化させない→治りが悪ければ歯科医院へ」の順序で考えると整理しやすくなります。
矯正用ワックスで装置をカバーする
ワイヤー矯正でカタル性口内炎ができたら、まず試したいのが矯正用ワックスです。装置の角や、長く出ているワイヤーの先端にワックスを貼り付けて、粘膜とのあいだに緩衝材を作ります。
使い方の基本は3ステップです。
| 手順 | やること |
|---|---|
| ①ちぎる | 米粒〜豆粒程度の大きさにちぎって指で丸める |
| ②水分を取る | あたっている装置の表面をティッシュなどで軽く拭いて水分を取る |
| ③押し付ける | 装置の上にしっかり押し付けて固定する |
ワックスは水分があると密着しないため、装置を乾かしてから貼るのがコツです。食事中に外れることがありますが、誤って飲み込んでも体内では消化されないため、健康への影響はほぼ問題ありません。
ワックスは矯正歯科で渡されることが多く、市販でも購入できます。
装置の角があたるカタル性口内炎なら、ワックスで物理刺激を止めることが最優先です。薬を塗る前に、まず刺激源を覆うことを考えてください。
市販薬・塗り薬で炎症を抑える
すでに粘膜に潰瘍ができている場合や、アフタ性口内炎で痛みが強い場合は、市販薬の併用が選択肢になります。剤型は主に3種類です。
| 剤型 | 特徴 | 矯正中に向くか |
|---|---|---|
| 軟膏・ジェル | 患部に直接塗る。塗布後しばらく食事を避ける必要あり | 装着部以外の口内炎に向く |
| パッチ・貼り薬 | 患部を物理的にカバーする。装置と干渉しやすい | 装置がない部位に向く |
| スプレー | 広範囲・複数箇所に使いやすい | 装置で患部に手が届きにくいときに便利 |
薬を使っても1週間以上痛みが引かない、潰瘍が大きくなる場合は、自己判断で薬を増やさず歯科医院または口腔外科で診てもらってください。市販薬は症状を抑える一時的な手段として活用しましょう。
食事で気をつけること
口内炎があるときの食事は、刺激と温度を抑えることが基本です。粘膜の傷を悪化させやすい食品と、楽に食べられる食品を整理しておきます。
| 避けたい | 食べやすい |
|---|---|
| 香辛料の強い料理(カレー・キムチ・激辛麺) | おかゆ・リゾット・茶碗蒸し |
| 酸味の強いもの(柑橘・酢の物・トマトソース) | スープ・ポタージュ |
| 熱い汁物・炒め物 | 冷ましたうどん・冷製スープ |
| 硬いもの・とがった食感(せんべい・揚げ物の衣) | 豆腐・卵料理・蒸し野菜 |
熱い料理は粗熱を取ってから食べるだけでも、粘膜への負担がかなり減ります。ストローを使うと痛む部位に飲み物が触れにくく、しみる症状を和らげられます。
治りが悪いときは歯科医院で装置を調整してもらう
ワックスを貼っても同じ場所に何度も口内炎ができる、ワイヤーが長く出ていて自分では対処できない、装置が外れかけているといった場合は、早めに矯正歯科で装置を調整してもらってください。装置側の問題は、装置を調整しないと解決しません。
来院時に伝えていただきたいのは、次の3点です。
- いつから:何日前から痛みがあるか
- どこに:口の中のどの位置にできているか(右上・左下・舌の側面など)
- 何回目:同じ場所が繰り返しているか、初めての場所か
この情報があると、装置のどの部分が原因かを特定しやすくなり、調整のポイントが絞れます。
口内炎を繰り返さないための予防策
口内炎は「できてから対処する」だけでなく、日常のケアで頻度を減らすことができます。装置の刺激を完全にゼロにはできませんが、粘膜が傷を修復しやすい状態を保つことで、できにくい口の中の環境に近づけられます。
ビタミンB群を意識した食事
粘膜の健康維持には、ビタミンB群が大切な役割を果たします。ビタミンB2は皮膚や粘膜の保護にかかわる栄養素で、不足すると口角炎・舌炎・皮膚炎などが起こります。
【ビタミンB群を含む食品例】
| 栄養素 | 多く含む食品 |
|---|---|
| ビタミンB2 | レバー・うなぎ・卵・納豆・乳製品 |
| ビタミンB6 | 鶏むね肉・まぐろ・かつお・バナナ |
| ビタミンB12 | しじみ・あさり・牡蠣・赤身魚 |
サプリメントで一気に補おうとするより、3食のなかで「卵を1個足す」「納豆を1パック食べる」など、無理のない範囲で続けるほうが習慣になります。極端に偏った食事が続くと、矯正中でなくても口内炎ができやすくなります。
口腔ケアで粘膜を守る
口の中が清潔に保たれていると、傷ができても感染しにくく、治りも早まります。矯正中は装置の周りに食べかすやプラーク(歯垢)が溜まりやすく、放置すると粘膜の炎症が悪化する原因になります。
矯正中の口腔ケアで意識したいポイントは3つです。
- 毎食後の歯みがきを習慣にする(夜だけ丁寧にではなく、回数を増やす)
- 装置周りはタフトブラシ(山型の小さな歯ブラシ)で1本ずつ丁寧に磨く
- 歯間ブラシかフロスでブラケット周りの汚れを取る
口内炎ができている部位は、その周辺だけ毛先のやわらかい歯ブラシに切り替えると、磨くときの痛みを抑えられます。痛いからといって歯みがきを省略すると、汚れが残って炎症が長引きます。「痛い場所は弱く、それ以外はいつも通り」のメリハリで磨くのが現実的です。
殺菌成分入りのうがい薬は、傷口に染みることがあります。矯正中で口内炎が続くときは、低刺激のうがい薬や、ぬるま湯でのうがいに切り替えるほうが続けやすくなります。
装置装着から1〜2週間は「慣らし期間」と考える
装置を取り付けた直後の1〜2週間は、口内炎ができやすい時期です。粘膜が装置の形に適応するまでのあいだ、頬の内側や唇の裏が装置にあたって傷になりやすいためです。
この時期の過ごし方を「無理をせず、ワックスを使い、痛む部位に負担をかけない」と決めておくと、その後の治療期間が楽になります。具体的には、
- ワックスを常に持ち歩き、痛みを感じた時点で貼る
- 硬いもの・刺激物の食事を1〜2週間は控える
- 痛みが強い日は無理にしっかり噛まず、やわらかい食事に切り替える
- 「これは慣れの過程」と理解しておく
この慣らし期間を越えると、多くの方は同じ装置でも痛みを感じにくくなります。最初の数週間で「やっぱり矯正は無理かもしれない」と思ってしまうと続かなくなるので、最初の山を越えるための準備期間という意識でこの時期を過ごしてください。
まとめ
矯正中の口内炎は、装置の物理的な刺激が原因のもの(カタル性口内炎)と、免疫力・栄養が関わるもの(アフタ性口内炎)に分けられます。装置の角があたって同じ場所に繰り返しできる場合は、矯正用ワックスで覆うのが最初の対処です。ワックスでも改善しないときは装置側の調整が必要なので、予約日を待たずに矯正歯科に相談してください。
歯並びや矯正治療で気になることがあれば、まずは一度ご相談にお越しください。矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前では、大学病院で長く矯正・口腔外科治療に携わってきた院長が、お一人お一人の歯並びとライフスタイルに合わせた治療の進め方を、お話ししながら一緒に考えます。
記事監修者

矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前
院長 三木 善樹
大学病院で培った治療と予防の経験を地域の皆様にお届けしていきたいと考えております。
矯正治療は長い時間をかけて歯並びを整える治療です。治療期間を通じて信頼できるパートナーとして寄り添えるよう、スタッフ一同努めてまいります。
- 経歴
- 1993年 徳島大学歯学部卒業
- 1997年 徳島大学大学院歯学研究科修了
- 1997年 徳島大学歯学部矯正学講座助手
- 2004年 札幌医科大学医学部口腔外科学講座助手
- 2007年 札幌医科大学医学部口腔外科学講座助教
- 2022年 矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前院長
- 所属学会
- 日本矯正歯科学会・認定医
- 日本口腔外科学会
- 日本顎変形症学会
- 日本口蓋裂学会
- 日本顎関節学会
- 北海道矯正歯科学会
- 日本骨代謝学会
- 歯科臨床研修医指導医
【矯正治療(自由診療)に関する重要事項】
矯正治療(顎変形症など一部を除く)は公的医療保険が適用されない自由診療です。
- 治療内容:ワイヤーやマウスピース矯正装置を用いて歯を少しずつ動かし、歯並びと噛み合わせを整える治療
- 治療期間・回数:症例により1〜3年程度。月1回程度の通院で調整。装置除去後は2年程度の保定期間が必要(個人差あり)
- 費用の目安:治療費500,000円(税込)、検査料70,000円(税込)、診断料30,000円(税込)、調整料6,000円(税込・毎月)。クリニックによって異なります。
- リスク・副作用:装置装着初期の痛みや違和感、口内炎、歯磨きのしにくさによる虫歯・歯肉炎のリスク、歯根吸収、後戻り、まれに歯髄壊死など
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住所〒060-0003
北海道札幌市中央区北3条西14丁目2-2
ダイアパレス北3条第2 1F -
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JR函館線「桑園」駅から徒歩15分 -
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