叢生とは?原因・治療法・費用を矯正専門医が解説
叢生(そうせい)は、日本人の不正咬合の中でも特に多いタイプの歯列不正です。歯が重なったりねじれたりする原因は一つではなく、顎の大きさ・歯の大きさ・成長過程での変化が複合的に関わっています。原因の見きわめから治療の選択肢、費用・期間の目安まで押さえておくことで、ご自身のケースで「次に何をすべきか」を判断しやすくなります。
叢生とは:歯が重なり合って並ぶ歯列不正
叢生とは、歯が前後にずれたりねじれたりして重なり合い、一列にきれいに並んでいない歯並びのことです。歯科の専門用語では「Crowding(クロウディング)」と表記され、日本矯正歯科学会も代表的な不正咬合の一つに位置づけています。
仕組みはシンプルで、顎のスペースに対して歯の合計幅が大きすぎることが根本にあります。3人掛けのベンチに4人で座ろうとすると、誰かが前後にずれたり、体を斜めに向けるしかありません。歯も同じで、並ぶスペースが足りないと前後に重なったり、ねじれて生えたりします。
叢生は前歯にも奥歯にも起こり、前歯側は鏡で気づきやすい一方、奥歯のねじれは定期検診で初めて指摘されるケースもあります。
叢生と八重歯の関係
八重歯は、叢生のうち上の犬歯(糸切り歯)が歯列の外側に飛び出した状態を指します。犬歯は永久歯の中で生えそろうのが遅いグループに属するため、隣の歯がスペースを使い切ってしまうと、後から出てくる犬歯の居場所が残らず、外側に押し出される形で並びます。
つまり八重歯は、犬歯のスペース不足が表に出た叢生の典型例という位置づけです。叢生は犬歯に限らず、前歯の重なりや奥歯のねじれも含む広い概念で、日本矯正歯科学会も「乱ぐい歯・八重歯」を一括りに扱っています。日本では八重歯を可愛らしさの象徴として残すご相談もありますが、磨き残しや咬み合わせへの影響が伴うため、矯正治療の対象として考える方は少ないかもしれません。
叢生を放置するとどうなるか
叢生を放置したときに最も影響が大きいのは、見た目よりも口の中の衛生状態です。歯が重なっている部分は歯ブラシの毛先が届きにくく、同じ場所に磨き残しが慢性的にたまる状態が続きます。プラーク(歯垢)が同じ箇所に残り続けると、虫歯や歯周病の発症リスクが上がっていきます。
具体的には、以下のような影響が出ることがあります。
- 重なった部分にプラークや歯石がたまり、虫歯・歯周病が起こりやすくなる
- 咬み合わせのバランスが崩れ、特定の歯に過度な力がかかる
- 食べ物を十分にすりつぶせず、咀嚼の効率が落ちる
「歯磨きをきちんとしているのに、いつも同じ場所に虫歯ができる」と感じている方の中には、磨き方の問題ではなく、歯並びそのものが原因になっているケースがあります。定期検診で同じ歯のあたりに汚れが繰り返し指摘されるようでしたら、その部分に叢生が隠れていないかを矯正専門の歯科に確認していただくと、原因の切り分けがしやすくなります。
叢生の原因:顎と歯のサイズの不均衡
叢生の原因は、生まれつきの「先天的な要因」と、生え変わりや習慣による「後天的な要因」に分かれます。どちらに当てはまるかで治療方針も保険適用の可否も変わります。両方が重なってデコボコが強まることもあり、初診の検査でどこに原因があるかを見極めるところから治療計画が始まります。
先天的な要因:顎の大きさと歯の大きさ
叢生の中でも多い原因は、顎の骨が標準より小さい、あるいは歯が標準より大きいというサイズの不均衡です。これは遺伝の影響を受けやすく、親御様の歯並びに叢生がある場合、お子様にも同じ傾向が出ることがあります。顎の大きさは骨格で決まる部分のため、後から自分で広げることはできません。
歯の幅にも個人差がありますが、こちらも自分で変えられる要素ではありません。
先天的な要因が絡む叢生は、いわゆる予防が難しい領域です。並ぶスペースを矯正治療で作り出し、歯を適切な位置に動かしていくのが基本的な解決策になります。骨格性のズレが大きい場合は、歯の移動だけでは咬み合わせが整わず、外科的な処置を組み合わせる選択肢が出てきます。
骨格性かどうかは、レントゲンや咬み合わせの分析を経て初めてはっきりする部分が多いため、気になる方は矯正の専門歯科にご相談いただくと判断材料が得られます。
後天的な要因:乳歯の早期脱落と口腔習癖
後天的な要因としては、以下のようなものがあります。
- 乳歯が虫歯などで早く抜けると、隣の歯が空いたスペースに倒れ込み、後から生える永久歯の場所が狭くなる
- 指しゃぶり、舌で前歯を押す癖、口呼吸といった口腔習癖が続くと、歯列の形がゆがむ
- やわらかい食事が中心で咀嚼回数が少ないと、顎の発達が十分に進まない場合がある
乳歯はいずれ抜ける歯と思われがちですが、永久歯が正しい位置に生えるためのガイドの役割を持っており、虫歯で早く失うと後から出てくる永久歯の並びに影響します。お子様の乳歯期の虫歯予防は、見た目以上に大きな意味を持ちます。
口腔習癖は、ご家庭で気づきやすい一方、習慣として根づくと自然には改善しにくくなります。指しゃぶりが3〜4歳を過ぎても続く、いつも口がぽかんと開いているといったサインがあれば、早めに歯科でご相談いただくと、必要に応じて改善のための対策をご提案できます。
叢生の治療方法と自分に合った選び方
叢生の治療は、矯正装置で歯を動かしてスペースを作り、適切な位置に並べ替えていくのが基本です。重症度・年齢・骨格の状態によって、ワイヤー矯正・マウスピース矯正・外科矯正のどれが現実的な選択肢になるかが変わります。ここでは代表的な治療方法と、抜歯の判断軸を整理します。
| 治療方法 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| ワイヤー矯正(表側) | ブラケットとワイヤーで歯を動かす。歯の動きを3次元的にコントロールしやすい | 軽度から重度の叢生まで幅広く対応 |
| ワイヤー矯正(裏側・舌側) | 歯の裏側に装置をつけるため、正面からは目立ちにくい | 装置を見せたくない方。表側より費用がかかる傾向 |
| マウスピース矯正 | 透明な装置を取り外しながら段階的に歯を動かす | 軽度から中等度の叢生。重度は適応外になることがある |
ワイヤー矯正(表側・裏側)
ワイヤー矯正は、歯一本一本にブラケットを接着し、ワイヤーを通して歯を動かす方法です。叢生の治療では最も標準的な選択肢で、軽度から重度まで幅広く対応できます。回転している歯やねじれている歯のように、3次元的な動きが求められる症例で力を発揮しやすい装置です。
歯の裏側に装置をつける舌側矯正(裏側矯正)は、正面からはほとんど装置が見えない方法ですが、表側のワイヤー矯正より費用が高めで、装置に慣れるまで発音や舌の感覚に変化を感じる方もいらっしゃいます。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、透明なマウスピースを段階的に取り替えて歯を動かす方法です。装置を取り外せるため、食事や歯磨きを普段どおりに行えるのが特徴で、装置の見た目を抑えたい方に選ばれています。
ただし、1日20時間以上の装着を守ることが治療の成否を大きく左右するため、自己管理が求められる治療法です。
マウスピース矯正には不向きな動かし方があります。歯を回転させたり、大きく押し下げたりする動きは苦手で、叢生の重症度が高い場合や抜歯を伴うケースでは適応外になることがあります。装置の見た目だけで治療方法を決めると、後から「想定通りに動かなかった」となるリスクが残ります。
抜歯が必要になるケースとならないケース
叢生の治療では、抜歯をするかしないかが大きな分岐点になります。判断の軸はシンプルで、並ぶスペースをどうやって確保するかに尽きます。スペースを作る手段が「歯列を広げる」「奥歯を後ろに動かす」だけでは足りないとき、抜歯が選択肢に入ってきます。
抜歯が必要になりやすいケースの特徴は、以下のとおりです。
- 顎の骨格に対して歯が大きく、スペース不足が顕著
- 前歯の前突(出っ歯)も併発しており、前歯を後ろに下げる必要がある
- 上下の咬み合わせを整えるために、左右対称の抜歯が望ましい
抜歯の必要性は、レントゲン・口腔内写真・歯型などをそろえたうえで矯正専門の医師が判断します。「抜きたくない」というお気持ちは大切にしますが、無理にスペースを作ると前歯が前に出てしまい、結果的にお口元の見た目や咬み合わせを損ねることがあります。
納得して進めるためにも、なぜ抜歯が必要か、抜かない場合に何が起きるかを、初診の段階で具体的にお聞きいただくとよいでしょう。
叢生の矯正にかかる費用と期間の目安
叢生の矯正費用と治療期間は、治療方法と叢生の程度によって幅があります。以下の表は一般的な目安です。
| 治療方法 | 費用の目安(税込) | 治療期間の目安 |
|---|---|---|
| 表側ワイヤー矯正(全体) | 60万〜130万円程度 | 1年〜3年程度 |
| 裏側ワイヤー矯正(全体) | 100万〜170万円程度 | 2年〜3年程度 |
| マウスピース矯正(全体) | 60万〜100万円程度 | 1年〜3年程度 |
| 部分矯正(軽度の叢生) | 10万〜60万円程度 | 2ヶ月〜1年程度 |
費用を比較するときは、総額に何が含まれているかを確認することが重要です。検査・診断料、装置代、毎回の調整料、保定装置(リテーナー)の費用がすべて含まれている医院と、それぞれ別途請求される医院があります。治療終了までの総額で比べるようにしてください。
なお、矯正治療は原則として自由診療(保険適用外)ですが、顎変形症と診断された場合など一部のケースでは保険適用になることがあります。当院は骨格性の不正咬合で外科矯正が選択肢になる方の保険適用治療に対応しています。ご自身が保険の対象になりそうかは、初診の段階で目安をお伝えできますので、お気軽にご相談ください。
矯正治療を安心して続けるためのクリニックの選び方
矯正治療は、装置をつけてから保定が落ち着くまで含めると数年単位のお付き合いになります。治療の腕だけでなく、長く通い続けられる雰囲気か、説明を聞いて納得できるかを最初の段階で見ておかれると、途中で迷子になりにくくなります。
治療中の説明とコミュニケーションを重視する
矯正治療中は、装置による違和感、痛みの程度、想定どおりに歯が動かないときの不安など、こまかい疑問が次々と出てきます。そのとき、その都度質問できる雰囲気があるかどうかが、治療の続けやすさに直結します。
クリニックを選ぶときに見ておきたいのは、初診の説明で「なぜこの治療方針か」が言葉で腹落ちするかという点です。抜歯が必要な理由、装置を選んだ根拠、期間の見立てを、専門用語で押し切らず、ご自身の言葉で理解できる形で説明しているかを確認してみてください。
加えて、調整時に質問しやすい雰囲気か、ご家族の同席に応じてくれるか、途中経過を写真や模型で見せてくれるかも、長期治療を支える要素になります。
矯正専門のクリニックに相談するメリット
矯正歯科には、日本矯正歯科学会が定める認定医・専門医の資格制度があり、矯正を中心に診療しているクリニックでは、これらの資格を持った医師が担当することが一般的です。一般歯科でも矯正治療を行うクリニックはありますが、複雑な症例や外科矯正が必要なケースでは、矯正を専門に扱うクリニックでの相談が現実的な選択肢になります。
矯正専門のクリニックに相談するメリットは、次の点に集約されます。
- 認定医・専門医による診断を受けやすい
- 重度の叢生や骨格性の不正咬合への対応経験が積まれている
- 症例数が多く、判断のばらつきが少ない
- 必要に応じて口腔外科や提携病院との連携が組める
まとめ
叢生は、歯のサイズと顎のスペースのアンバランスから生まれる歯列不正で、原因によって治療の選択肢も保険適用になるかどうかも変わります。軽度であれば矯正治療のみで、骨格性の要素が強い場合は外科矯正を含めた選択肢から方針を組み立てていきます。費用や期間は装置と症例で幅があるため、ご自身の叢生がどの段階にあり、どの治療方法が現実的かを、初診の精密検査で見立ててもらうことが最初の一歩になります。
矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前では、初診のご相談を無料で承っております。歯並びの状態を確認し、考えられる治療方針と費用・期間の目安をお伝えします。歯並びのことでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
記事監修者

矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前
院長 三木 善樹
大学病院で培った治療と予防の経験を地域の皆様にお届けしていきたいと考えております。
矯正治療は長い時間をかけて歯並びを整える治療です。治療期間を通じて信頼できるパートナーとして寄り添えるよう、スタッフ一同努めてまいります。
- 経歴
- 1993年 徳島大学歯学部卒業
- 1997年 徳島大学大学院歯学研究科修了
- 1997年 徳島大学歯学部矯正学講座助手
- 2004年 札幌医科大学医学部口腔外科学講座助手
- 2007年 札幌医科大学医学部口腔外科学講座助教
- 2022年 矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前院長
- 所属学会
- 日本矯正歯科学会・認定医
- 日本口腔外科学会
- 日本顎変形症学会
- 日本口蓋裂学会
- 日本顎関節学会
- 北海道矯正歯科学会
- 日本骨代謝学会
- 歯科臨床研修医指導医
【矯正治療(自由診療)に関する重要事項】
矯正治療(顎変形症など一部を除く)は公的医療保険が適用されない自由診療です。
- 治療内容:ワイヤーやマウスピース矯正装置を用いて歯を少しずつ動かし、歯並びと噛み合わせを整える治療
- 治療期間・回数:症例により1〜3年程度。月1回程度の通院で調整。装置除去後は2年程度の保定期間が必要(個人差あり)
- 費用の目安:治療費500,000円(税込)、検査料70,000円(税込)、診断料30,000円(税込)、調整料6,000円(税込・毎月)。クリニックによって異なります。
- リスク・副作用:装置装着初期の痛みや違和感、口内炎、歯磨きのしにくさによる虫歯・歯肉炎のリスク、歯根吸収、後戻り、まれに歯髄壊死など
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住所〒060-0003
北海道札幌市中央区北3条西14丁目2-2
ダイアパレス北3条第2 1F -
アクセス地下鉄東西線「西11丁目」・「西18丁目」駅から徒歩10分
JR函館線「桑園」駅から徒歩15分 -
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