矯正中に食べ物が挟まる原因と正しい対処法。挟まりやすい食品も紹介
矯正をはじめてから食べ物が歯の隙間に入りやすくなった、と感じる方は多くいらっしゃいます。これは装置の不具合ではなく、歯が動いている過程でできる一時的な隙間と、装置そのものの形状が原因です。挟まりやすさは治療が進むにつれて変わっていく性質のもので、正しいケアを身につければ毎日の食事を以前と同じように楽しめるようになります。
矯正中に食べ物が挟まりやすくなる3つの原因
挟まりやすさの背景は、装置の種類によって少しずつ違います。ご自身がどのパターンに当てはまるかを知っておくと、必要なケアの的が絞れて毎日の負担が軽くなります。
歯の移動にともなう一時的な隙間
矯正治療では、歯に弱い力を持続的にかけ続けることで、歯を支える骨が片側で吸収され反対側で再生される仕組みを使って歯を動かしていきます。隣り合う歯は同じタイミングで同じ量だけ動くわけではないため、治療の途中では歯と歯の間に一時的な隙間ができます。
たとえば前歯を整える過程でも、片方の歯が先に動きはじめると、その分だけ隣の歯との接触点がいったん外れてスペースが生まれます。抜歯をともなう矯正では数ミリ単位のスペースを閉じていくため、その閉鎖が完了するまでの間は奥まで食べ物が入り込みやすい状態が続きます。
この隙間は治療が進めば自然に閉じていく一時的なものです。「装置のせいで食べづらい」というよりも「歯がきちんと動いている証拠」と捉えていただくと、毎日のケアにも前向きに取り組みやすくなります。
ブラケットやワイヤーに食べ物が絡まる仕組み
イヤー矯正の場合、歯の表面に接着されたブラケットと金属ワイヤーが複雑な凹凸を作り出します。ワイヤーの下やブラケットの周囲には歯ブラシの毛先が届きにくい隙間があり、そこに細かな食べカスが入り込みやすい構造です。
とくにワイヤーを固定するゴムリングの周辺は食べ物が付着しやすく、麺類やネギなどの繊維質がワイヤーに巻きつくように絡まることがあります。ブラケットは1歯あたり3〜4mmほどの大きさがあり、その上下左右すべてに食べカスが溜まるポイントが生じます。舌側矯正(裏側矯正)の場合は目立ちにくい反面、鏡で確認しづらいぶん食べカスが溜まっていることに気づきにくい点にも注意してください。
マウスピース矯正でも起こる歯間の詰まり
マウスピース矯正は食事中に装置を外せるため、ワイヤーに食べ物が絡まるトラブルは起こりにくい治療方法です。
ただし、歯と歯の間の一時的な隙間は装置の種類に関係なく生じます。歯が動いている時期は、どの装置でも隣り合う歯の接触点がずれて食べ物が入りやすくなります。さらにマウスピースの表面に貼り付けるアタッチメント(突起)の周囲にも食べカスが残りやすく、食後にケアをせずそのまま装着すると、装置と歯の間に食べカスを閉じ込めた状態で過ごすことになります。
矯正中にどの治療方法が合うかは、歯並びの状態や生活スタイルによって変わります。マウスピース矯正をお考えの場合は、対応している矯正歯科でご自身に合うかを確認していただくのが確実です。
食べ物が挟まったまま放置するとどうなるか
「少しくらい放置しても大丈夫」と感じるかもしれませんが、矯正装置があるぶん通常より口腔内のリスクが高い状態です。放置がどのような問題につながるか、具体的に見ていきます。
虫歯のリスクが高まる
歯の表面には、口の中の常在菌が集まったプラーク(歯垢)と呼ばれる白っぽい沈着物がつきます。プラークの中の細菌は食べ物に含まれる糖分を分解して酸を出し、その酸が歯のエナメル質を溶かしていきます(脱灰)。通常は唾液がこの酸を中和し、カルシウムやリン酸で歯を修復してくれますが、矯正装置の周囲には唾液が行き渡りにくいため、脱灰が修復を上回りやすい状態になります。
その結果として現れるのが、ブラケットの周りに白く濁った斑点ができるホワイトスポットです。これはエナメル質が脱灰しはじめた初期虫歯のサインで、装置を外すまで気づかれず、外したときに目立って残ってしまうケースがあります。矯正の途中で虫歯治療が必要になると、矯正の進行を一時止めて虫歯の治療を優先することもあり、結果として治療全体が長くなってしまいます。
毎日のケアは、虫歯予防というより「矯正を予定どおりに進めるための時間管理」と考えていただくと、続けやすくなります。
歯肉炎から歯周病へ進行する
歯と歯肉の境目に食べカスやプラークが残り続けると、歯肉が赤く腫れ、ブラッシングで出血する歯肉炎の状態になります。歯肉炎の段階であれば、丁寧なブラッシングと歯科でのクリーニングで改善が見込めます。
問題はその先です。歯肉炎を放置すると、歯と歯肉の間の溝(歯周ポケット)が深くなり、歯を支える骨(歯槽骨)が少しずつ溶けていく歯周病に進みます。歯周病が進むと、歯を動かす土台そのものがゆるくなるため、矯正治療の継続が難しくなる場合もあります。
矯正中は装置のぶん歯肉に炎症が起きやすい状態なので、磨くたびに出血する、歯肉が腫れて装置に覆いかぶさる、といった変化に気づいたら早めに担当の歯科にご相談ください。ブラッシング方法を一緒に見直すだけで落ち着くケースが多くあります。
口臭が強くなる原因にもなる
歯間に残った食べカスは、口の中の細菌に分解される過程でにおいの元になる成分(揮発性硫黄化合物)を発生させます。プラーク1mgには10億個以上の細菌が住みついていると報告されており、磨き残しが多いほどにおいの発生源も増えていきます。
ワイヤー矯正の場合は装置周りの細かな段差にプラークが残りやすく、マウスピース矯正の場合も食後すぐにブラッシングをせずに装着すると、装置の内側に細菌のにおいがこもることがあります。
口臭は自分では気づきにくく、人と会う前にだけ気にしても改善しにくい性質のものです。毎食後に短時間でもケアする習慣を作っておくと、人と話すときの自信にもつながります。気になる方は補助的に洗口液(マウスウォッシュ)を併用すると、ブラッシング後に残った細菌の活動を抑えやすくなります。
矯正中に食べ物が挟まったときの正しい取り方
挟まったときの基本は「フロス→歯間ブラシ→タフトブラシ」の順で使うことです。それぞれ得意な部位が違うため、組み合わせて使うとほとんどの磨き残しに対応できます。
デンタルフロスで歯間の食べカスを除去する
歯と歯の間に詰まった食べ物には、デンタルフロスがいちばん確実に届きます。ワイヤー矯正の方は、フロススレッダー(先端が硬く針のようになっている糸通し)を使うと、ワイヤーをまたぐ形でフロスを歯間に入れられます。
使い方のポイントは、歯肉のすぐ下まで優しく入れてから、歯の側面に沿わせて上下に動かすことです。無理に引き抜くとワイヤーが変形したりブラケットが外れたりすることがあるため、最後はワイヤーの下から横方向にそっと引き抜くようにしてください。同じ場所を5〜6回ほど動かすと、食べカスとプラークの両方を落としやすくなります。
マウスピース矯正の方は装置を外してから通常のフロスを使えるため、ワイヤー矯正に比べてフロス操作は簡単です。
歯間ブラシでブラケット周囲を清掃する
フロスでは届きにくい装置の周りには、歯間ブラシが向いています。サイズは、歯間に「軽く挿入できて抵抗を感じる手前」くらいの太さを選びます。一般的にはSSS〜SSサイズが使いやすいことが多いものの、歯が動くにつれて歯間の幅も変わるので、定期通院の際にスタッフへ確認していただくと安心です。
ワイヤー矯正の場合は、ブラケットとブラケットの間にブラシを斜めに入れ、ワイヤーの上下両側から清掃するのがコツです。歯間ブラシにはまっすぐな I 字型と先が曲がった L 字型があり、前歯には I 字型、奥歯には L 字型が届きやすい傾向があります。
サイズが大きすぎるブラシは歯肉を傷つける原因になります。出血が続く・痛みがある場合はサイズを下げて様子を見てください。ブラシの針金部分が曲がってきたら交換のサインなので、無理に使い続けないようにしましょう。
タフトブラシで細かい部分を仕上げる
タフトブラシは毛束がひとつだけの小さな歯ブラシで、通常の歯ブラシでは届きにくいブラケットの際や歯肉との境目を磨くのに向いています。鉛筆を持つように軽く握り、毛先を当てたい場所にピンポイントで当て、小刻みに動かしてください。
仕上げのタフトブラシでとくに意識したいのは、通常の歯ブラシだけでは毛先が当たりにくいブラケットの上辺・下辺です。ブラケットの四辺を一辺ずつ磨くイメージで使うと、装置周りのプラークを効率よく落とせます。
時間がない日でもタフトブラシだけは持ち歩いていただくと、食後に装置周りに引っかかった大きな食べカスをすばやく取り除けます。
爪楊枝や硬い道具で取ろうとしてはいけない理由
食べ物が挟まると、つい爪楊枝で取り除きたくなる方もいらっしゃいます。しかし、先がとがった硬い道具を使うと歯肉を傷つけるだけでなく、ブラケットを歯に固定している接着剤を剥がしたり、ワイヤーを変形させたりする恐れがあります。
ブラケットが外れると再接着のための来院が追加で必要になり、装置の破損は治療計画の遅れに直結します。ワイヤーが変形した場合は予定とは違う方向に力がかかり、歯の動きが計画とずれてしまうこともあります。外出先でフロスや歯間ブラシが手元にないときは、まず水で強めにうがいをして大きな食べカスを流し、帰宅後に改めて丁寧なケアをするほうが安全です。
挟まりやすい食べ物と食べ方の工夫
挟まりやすい食材を「避ける」のではなく、切り方や噛み方で対応するのが矯正中の食生活を続ける基本です。栄養バランスを保ちながら、装置への負担を減らす方向で工夫していきましょう。
繊維質の多い野菜・肉は小さく切る
ほうれん草・小松菜・えのき・もやし・ねぎなど繊維のある野菜は、ワイヤーや歯間に絡まりやすい代表例です。調理の段階で1〜2cm程度に切っておくと、装置に巻きついたり奥まで入り込んだりしにくくなります。
肉類では、鶏のささみ・牛すじ・赤身の塊肉など筋繊維がしっかりした部位が挟まりやすい傾向があります。薄切りにする・圧力鍋で柔らかく煮込む・ひき肉にしてハンバーグやそぼろにする、といった調理法に切り替えると食べやすくなります。
前歯で噛み切ろうとせず、奥歯で細かくすりつぶす意識を持つだけでも、装置への負担と挟まりは減らせます。栄養を維持するためにも、食材を諦めるのではなく「切り方」と「噛み方」で工夫する発想が、矯正中の食事を快適に保つコツです。
粘着性のある食べ物を避けるべき理由
キャラメル・ソフトキャンディ・餅・ガム・水あめ系のお菓子など、粘着性が強い食品はブラケットに張りついて取り除きにくく、ワイヤー矯正中はとくに注意が必要です。
ブラケットを歯に固定している接着剤は、強い引っ張り力がかかると剥がれるよう設計されています。粘着性の食品を奥歯で勢いよく噛むと、その引っ張り力を超えてブラケットが外れることがあります。
マウスピース矯正の場合は装置を外して食べられるため影響は少ないものの、アタッチメントに粘着物が付着すると清掃に時間がかかります。どうしても食べたい場合は、小さくちぎって奥歯でゆっくり噛む、食べたあとすぐにブラッシングをする、といった対策で影響を抑えられます。
麺類や海苔など細かい食品への対処
ラーメン・パスタ・うどんなどの麺類は、長いままだとワイヤーに巻きつきやすく、目で見ても気になる代表例です。刻み海苔・しらす・ごま・青のりなど細かい粒や薄い食品も、歯間やブラケットの段差に残りやすい傾向があります。
麺類は、箸やフォークで短めにカットしてから口に運ぶと、装置に巻きつくリスクを減らせます。一口の量を少なめにして、奥歯でゆっくり噛むリズムを保つと、舌や唇の動きで食べ物が前歯に押しつけられにくくなります。食事のあとは、まず水でしっかりうがいをして大きな食べカスを流してからブラッシングに入ると、効率よくケアできます。
外出先でも安心できる携帯ケアグッズの選び方
ランチや会食のたびに「家に帰るまでケアできない」状態が続くと、装着時間のロスや食べカスの放置につながります。持ち歩く道具を絞っておくと、外食の心理的なハードルも下がります。
最低限持ち歩きたい3つのアイテム
矯正中の外出時に持っておきたいのは、携帯歯ブラシ・歯間ブラシ・デンタルフロスの3点です。
携帯歯ブラシは、ヘッドが小さめのものを選ぶとブラケット周りに毛先が届きやすくなります。矯正用と銘打たれた歯ブラシには、毛先が山型にカットされているものがあり、装置の凹凸に沿わせて磨ける形状が特徴です。歯間ブラシはキャップ付きの製品が衛生的で、使い捨てタイプなら持ち運びの気軽さが上がります。
外食後の口腔ケアは、慣れれば数分で終わります。歯磨き粉がなくても水だけで装置周りを洗えるため、荷物を最小限にしたい方は省略しても問題ありません。フッ素入りの歯磨き粉を使い続けたい場合は、小分け容器に詰め替えておくと携帯しやすくなります。
ウォーターフロス(携帯型口腔洗浄器)の活用
水流で歯間の汚れを洗い流すウォーターフロス(口腔洗浄器)は、矯正中のケアに向いた補助的なアイテムです。据え置き型のほか、充電式の携帯モデルもあり、外出先でも使えます。
ワイヤーの下やブラケットの周り、深めの歯周ポケットなど、フロスや歯間ブラシだけでは届きにくい部位の食べカスを、水流で押し出すように除去できます。水圧の強さを切り替えられるタイプを選べば、歯肉が腫れているときは弱め、しっかり落としたいときは強め、と使い分けられます。
ただし、ウォーターフロスはプラーク自体をこすり落とす力は弱いため、歯ブラシ・フロス・歯間ブラシの代わりにはなりません。あくまで仕上げや、忙しい日の応急ケアという位置づけで使っていただくのが現実的です。
まとめ
矯正中の食べ物の挟まりは、歯が動いている過程でできる一時的な隙間と、装置の構造による自然な現象です。
毎日のケアの基本は、フロス・歯間ブラシ・タフトブラシを食後に組み合わせて使いましょう。外出先には携帯歯ブラシ・歯間ブラシ・フロスの3点を持ち歩き、爪楊枝など硬い道具で無理に取り除こうとしないでください。
歯並びや矯正治療で気になることがあれば、まずは一度ご相談にお越しください。矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前では、大学病院で約30年にわたり矯正・口腔外科の治療に携わってきた院長が、お一人お一人の歯並びと生活に合わせたケアの仕方を、お話ししながら一緒に考えていきます。被ばく線量の少ないCTや4Kデジタルマイクロスコープを用いた精密検査で、まずはご自身の口の中の状態を知るところから始められます。
記事監修者

矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前
院長 三木 善樹
大学病院で培った治療と予防の経験を地域の皆様にお届けしていきたいと考えております。
矯正治療は長い時間をかけて歯並びを整える治療です。治療期間を通じて信頼できるパートナーとして寄り添えるよう、スタッフ一同努めてまいります。
- 経歴
- 1993年 徳島大学歯学部卒業
- 1997年 徳島大学大学院歯学研究科修了
- 1997年 徳島大学歯学部矯正学講座助手
- 2004年 札幌医科大学医学部口腔外科学講座助手
- 2007年 札幌医科大学医学部口腔外科学講座助教
- 2022年 矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前院長
- 所属学会
- 日本矯正歯科学会・認定医
- 日本口腔外科学会
- 日本顎変形症学会
- 日本口蓋裂学会
- 日本顎関節学会
- 北海道矯正歯科学会
- 日本骨代謝学会
- 歯科臨床研修医指導医
【矯正治療(自由診療)に関する重要事項】
矯正治療(顎変形症など一部を除く)は公的医療保険が適用されない自由診療です。
- 治療内容:ワイヤーやマウスピース矯正装置を用いて歯を少しずつ動かし、歯並びと噛み合わせを整える治療
- 治療期間・回数:症例により1〜3年程度。月1回程度の通院で調整。装置除去後は2年程度の保定期間が必要(個人差あり)
- 費用の目安:治療費500,000円(税込)、検査料70,000円(税込)、診断料30,000円(税込)、調整料6,000円(税込・毎月)。クリニックによって異なります。
- リスク・副作用:装置装着初期の痛みや違和感、口内炎、歯磨きのしにくさによる虫歯・歯肉炎のリスク、歯根吸収、後戻り、まれに歯髄壊死など
-
-
住所〒060-0003
北海道札幌市中央区北3条西14丁目2-2
ダイアパレス北3条第2 1F -
アクセス地下鉄東西線「西11丁目」・「西18丁目」駅から徒歩10分
JR函館線「桑園」駅から徒歩15分 -
駐車場駐車場はクリニックの裏、マンション敷地内15番ですが、使用中の場合は近隣駐車場に停めてください。受付で駐車券を提示し申告していただけましたら1時間無料チケットをお渡しします。
-
-
予約について
診療時間 月 火 水 木 金 土 日 10:00 ~ 13:00 - - ● ● ● ● ▲ 14:00 ~ 18:00 - ● - - ● ● ▲ 休診日/月曜日・火曜日午前・水曜日午後・木曜日午後・隔週日曜日・祝日
※1 日曜日は隔週
※ 最終受付は17時30分
マイナンバーカードでの受付OK
各種キャッシュレス決済OK診療科目:矯正歯科