すきっ歯とは?原因や治し方の種類、費用目安と後戻り対策を解説
すきっ歯と一言で言っても、前歯の中央だけに隙間がある「正中離開」と、複数の歯にわたって隙間が散らばる「空隙歯列」では、治療範囲も期間も大きく変わります。さらに見落とされやすいのが、隙間ができた原因の方です。上唇小帯の付着異常、過剰歯、舌癖、歯周病、生まれつきの歯のサイズの不均衡など、原因によって治療の入口が変わるため、原因を特定しないまま矯正だけ進めると後戻りや再発につながることがあります。
すきっ歯(空隙歯列)の種類と見分け方
すきっ歯と呼ばれる状態には、医学的にはいくつかの分け方があります。どのタイプに該当するかで治療の範囲が変わるため、まず自分のすきっ歯がどのタイプに当てはまるかを把握しておくと、その後の費用や期間の見通しが立てやすくなります。
正中離開と空隙歯列の違い
「正中離開」は上の前歯(中切歯)2本の間に隙間がある状態を指す呼び方です。鏡で口を開けたとき、左右の前歯の真ん中に1ヶ所だけ隙間が見えるなら、正中離開に当てはまります。
一方「空隙歯列」は、前歯だけでなく奥歯まで含めて、複数の歯と歯の間に隙間がある状態を指します。隙間が散らばっているため、正面から見ても歯並び全体が間延びした印象になりやすいタイプです。
この2つの違いは、見た目の話だけでなく治療範囲に直結します。正中離開で隙間が前歯1ヶ所に限定されているなら、前歯だけを動かす部分矯正で対応できる可能性があります。空隙歯列のように奥歯まで隙間が及んでいる場合は、噛み合わせ全体を整える必要があるため、全体矯正の対象になりやすい傾向です。
子どものすきっ歯は経過観察でよい場合がある
乳歯の段階で前歯に隙間があるとき、保護者の方が心配されて矯正歯科に相談に来られるケースは少なくありません。ただし、乳歯期の隙間は「発育空隙(はついくくうげき)」と呼ばれる正常な現象であることが多く、永久歯が生えそろう過程で自然に閉じていきます。
永久歯は乳歯よりひと回り大きいため、乳歯のうちにある程度の隙間がある方が、生え変わりがスムーズに進みます。隙間があること自体を心配するのではなく、永久歯が生えそろう小学校高学年ごろになっても2mm以上の隙間が残っているかを、判断の目安にしていただくとよいです。
永久歯の前歯が生えそろっても隙間が閉じない場合、上唇小帯の付着異常、過剰歯(本来の歯の数より多く形成された余分な歯)、永久歯の先天欠如などが背景にある可能性があります。これらは外見からは判断が難しいため、永久歯が出そろった時点で一度レントゲン検査を受けておくと安心です。
すきっ歯になる原因
すきっ歯の治療で見落とされやすいのが「なぜ隙間ができたのか」という原因の特定です。原因が違えば、矯正の前にやるべき処置や、矯正後に再発を防ぐ取り組みが変わります。ここでは大きく3つの原因に分けて整理します。
あごの骨と歯のサイズが合っていないケース
最も多いのが、あごの大きさと歯のサイズの比率が合っていないケースです。あごが大きい、または歯が小さい(矮小歯)ことで、歯を並べたときに隙間ができてしまいます。
特に多いのが、上の前歯の2番目(側切歯)が周りの歯より小さい「矮小歯側切歯(わいしょうし そくせっし)」の方です。前歯の真ん中の歯と、その隣の歯のサイズ差で隙間が生じます。この場合、矯正で歯の位置を整えるだけでは隙間が完全には埋まらないこともあり、矮小歯にはダイレクトボンディングやセラミックなどの補綴処置を組み合わせる選択肢も視野に入れて治療計画を立てます。
逆に、永久歯が本来生えるべき本数より少ない「先天欠如」が原因のケースもあります。日本人では下の側切歯や第二小臼歯の先天欠如が比較的多く、欠如している歯の隣に隙間ができやすいのです。
上唇小帯の付着異常による正中離開
上唇と歯ぐきをつなぐ筋を「上唇小帯(じょうしんしょうたい)」と呼びます。乳児期にはこの筋が太く前歯の歯ぐきの近くまで伸びていますが、永久歯への生え変わりとともに通常は退縮していき、歯ぐきから離れた位置に細くおさまります。
ところが、永久歯が生えそろっても上唇小帯が前歯の間まで入り込んだままになっている方がいます。この状態を「上唇小帯の付着異常」と呼び、上唇小帯が前歯の歯ぐきの間にくさびのように入り込むことで、左右の前歯が寄り合うのを物理的に妨げ、正中離開につながります。
このタイプのすきっ歯では、矯正で前歯を寄せる前か治療途中のどこかで「上唇小帯切除術」という小さな処置を行うことが一般的です。切除しないまま矯正だけで隙間を閉じても、上唇小帯が再び歯の間に入り込んで隙間が再発しやすいためです。
似た原因として「過剰歯」もあります。前歯の真ん中、上の歯ぐきの中に、本来生えるべき歯ではない余分な歯が埋まっていて、それが前歯の根を押し広げているケースです。この場合は過剰歯の抜歯を先に行ってから矯正に進みます。
舌癖や歯周病など後天的な要因
生まれつきの要因がなくても、後天的な癖や病気で隙間ができることがあります。代表的なのが「舌癖(ぜつへき)」です。
舌癖とは、無意識のうちに舌で前歯を押す、飲み込むときに舌を歯と歯の間に突き出すといった習慣を指します。じわじわと歯を動かす力が毎日かかり続けることで、前歯の間に隙間が広がっていきます。
もうひとつ大人で多いのが「歯周病による歯の移動」です。歯を支えている歯槽骨が歯周病で減ると、歯が支えを失って動きやすくなり、噛む力や舌の力で歯が傾いて隙間が広がります。元々はきれいに並んでいた歯並びが、30代以降に少しずつ前歯の間が開いてきた場合、歯周病が背景にある可能性を疑った方がよいです。
すきっ歯を放置すると起こる問題
すきっ歯は見た目以外にも実生活への影響が出ることがあるため、隙間が広がりつつあるなら早めに相談する価値があります。
発音への影響とサ行が不明瞭になる仕組み
前歯の隙間で最も実生活に響きやすいのが、発音への影響です。サ行・タ行・ラ行といった子音は、舌先を上の前歯の裏側に近づけて、その隙間から空気を細く押し出すことで音を作っています。前歯の間に隙間があると、空気がそこから抜けてしまい、音がこもったり息が漏れたりして「サ行」が「シャ行」のように聞こえる発音不明瞭が起きやすくなります。
発音の問題は、隙間の大きさが2〜3mmを超えるあたりから自覚しやすくなります。電話応対や接客、人前で話す機会が多い方は、矯正によって発音の改善を実感されることが少なくありません。お子さんの場合、発音の習得時期にすきっ歯があると、誤った発音が定着してしまうこともあるため、永久歯が生えそろった段階で一度確認しておくと安心です。
歯並びが悪化するリスクと噛み合わせへの影響
すきっ歯を放置することで、噛み合わせ全体が崩れていくリスクもあります。
歯は一本ずつ独立して立っているのではなく、隣の歯や噛み合う歯とお互いに支え合って位置を保っています。前歯の間に隙間があると、その分だけ隣の歯が傾いてきたり、奥歯から押される力で前歯がさらに前方に出てきたりします。隙間がもう一段広がるか、別の場所に新しい隙間ができるか、いずれにしても「すきっ歯のままで止まる」のではなく、年齢とともに少しずつ歯並びが変化していく性質があります。
噛み合わせがずれると、特定の歯にだけ強い力がかかるようになり、その歯が虫歯や歯周病で失われやすくなる悪循環に入ります。さらに、隙間に食べ物が詰まりやすくなることでプラーク(歯垢)がたまり、歯肉炎・歯周炎が進行しやすい環境にもなります。発音や見た目の問題と合わせて、長期的な口腔の健康を守るという観点でも、原因の見極めと治療を検討する意味があります。
すきっ歯の矯正治療の種類と費用の目安
すきっ歯の治療には大きく分けて、歯を動かす矯正治療と、歯の形を補う補綴治療の2つの方向性があります。それぞれの特徴と費用の目安を整理します。
マウスピース矯正(インビザライン)の特徴
透明なマウスピース型の装置を1〜2週間ごとに交換しながら、少しずつ歯を動かしていく治療法です。装置が透明で目立ちにくく、食事や歯磨きのときには取り外せる点が特徴で、見た目を重視する方に選ばれています。
すきっ歯への適応としては、前歯の軽度な隙間を閉じるケースに向いています。一方で、歯を動かす方向や量に得意・不得意があり、回転を伴う動きや骨ごと動かすような大きな移動には向きにくい面があります。費用相場は部分的な治療で30万〜60万円程度、全体矯正で60万〜100万円以上が一般的な目安です。
ワイヤー矯正(表側・裏側)の特徴
歯の表面にブラケットと呼ばれる小さな部品を取り付け、そこに通したワイヤーの力で歯を動かしていく治療法です。1900年代から世界的に使われてきた方法で、症例の幅が広く、ほぼすべてのタイプの不正咬合に対応できる点が最大の特徴です。
すきっ歯への適応では、前歯の小さな隙間から、複数の隙間が散らばる空隙歯列、さらに上唇小帯切除や過剰歯抜歯を組み合わせる複雑な症例まで対応できます。費用は表側矯正の全体治療で70万〜100万円程度が一般的な相場で、ブラケットを歯の裏側に付ける裏側矯正(舌側矯正)は表側より割高になり100万〜150万円程度の幅になります。
なお、表側のワイヤー矯正でも、金属色のメタルブラケットを使うか、セラミック製の透明感あるブラケットを使うかで見た目の印象は大きく変わります。装置の種類は治療結果に直結するわけではなく、見た目への抵抗感をどこまで抑えたいかで選ぶ要素なので、カウンセリングで装置の選択肢を確認しておくと迷いが減ります。
ダイレクトボンディングやラミネートベニアとの違い
歯を動かす矯正とは別の方向性として、歯の形を補ってすきっ歯を解消する方法があります。
ダイレクトボンディングは、歯科用のレジン(プラスチック樹脂)を歯に直接盛り付けて、隙間を埋める処置です。1本あたり1〜3万円程度で、1日の治療で完了する手軽さが特徴です。ラミネートベニアは、歯の表面を薄く削ってセラミック製の付け爪のような板を貼り付ける方法で、1本あたり10〜15万円程度が相場です。
これらは矯正と違って歯を動かさないため、治療期間は短いものの、根本的な噛み合わせや歯並びは変わりません。隙間の幅が小さく見た目だけを整えたい場合や、矮小歯のように歯のサイズ自体に問題があるケースで矯正と組み合わせることがあります。
すきっ歯の程度別に見る治療法の選び方
「自分のすきっ歯にはどの治療が合うのか」を判断するうえで最もわかりやすい目安が、隙間の幅です。1〜2mm程度の軽度なケースと、3mm以上または複数箇所に及ぶケースで、治療法の選択肢が変わります。
隙間が1〜2mm程度の軽度なケース
前歯の真ん中だけに1〜2mm程度の隙間がある正中離開で、上唇小帯の付着異常や過剰歯がない場合は、選択肢が広がります。
- 部分矯正のワイヤー矯正で前歯だけを動かして閉じる
- マウスピース矯正で軽度の動きで対応する
- 矮小歯が背景にあるならダイレクトボンディングで隙間を埋める
いずれもが候補に入ります。費用相場は部分矯正で30万〜60万円程度、ダイレクトボンディングで1本数万円が目安です。
隙間が3mm以上または複数箇所に及ぶケース
隙間が3mm以上ある正中離開、または奥歯まで隙間が散らばる空隙歯列では、噛み合わせ全体を整える必要があるため、全体矯正の対象になります。
このレベルになると、上下の歯の噛み合わせ・前後の位置関係・正中(顔の真ん中)と歯列の中心のズレなどを含めて治療計画を立てます。表側のワイヤー矯正で全体を動かすケースが標準で、費用相場は70万〜100万円程度、治療期間は2〜3年程度が一般的な目安です。
さらに、上あごと下あごの大きさや位置のズレが大きく「顎変形症」と診断される場合は、矯正だけでは対応できず、外科手術を併用した「外科矯正」が選択肢になります。顎変形症の外科矯正は、厚生労働大臣が定める施設基準を満たした医療機関で行えば健康保険の適用対象です。日本矯正歯科学会の解説でも、顎離断等の手術を必要とする顎変形症は保険診療の適用対象として明記されています。
矯正後の後戻りを防ぐ保定の重要性
すきっ歯の矯正で、装置を外したあとに最も気をつけていただきたいのが「後戻り」です。一度閉じた隙間が、保定の不徹底や原因の見落としで再び開いてしまうことがあるため、矯正本体と同じくらい大切な期間として位置づけて治療計画を立てています。
保定装置(リテーナー)の役割と使用期間
矯正で動かしたばかりの歯は、周囲の歯槽骨や歯肉がまだ新しい位置に馴染んでいない状態です。装置を外した直後は歯が最も元の位置に戻りやすい時期で、ここを乗り切るために使うのが「リテーナー(保定装置)」です。
保定期間の目安は1〜3年が一般的で、治療期間と同じ程度の期間をかけて歯並びを安定させる考え方です。最初の1年程度は食事と歯磨き以外の時間に終日装着し、歯並びの安定が確認できたら夜間のみの使用に移行する流れが基本です。装着時間が短くなった分だけ後戻りのリスクが上がるため、自己判断でリテーナーを外す時期を早めないことが結果的に矯正治療の成果を守ります。
リテーナーには取り外し式(マウスピース型・ワイヤー入り型)と固定式(前歯の裏側にワイヤーを接着するタイプ)があり、隙間の場所や生活スタイルに合わせて選びます。
すきっ歯が後戻りしやすい理由と対策
すきっ歯はもともと後戻りしやすい不正咬合のひとつです。理由は、隙間ができた原因が矯正後も体に残りやすいためです。
舌癖が原因だった方が、矯正中に舌のトレーニングを行わなかった場合、装置を外したあとも舌で前歯を押し続ける癖が残るため、再び前歯が押し出されて隙間が開いていきます。上唇小帯の付着異常を残したまま矯正だけで隙間を閉じた場合も、上唇小帯が再び歯の間に入り込んで隙間を作ります。歯周病が背景にある方では、保定中に歯周病が進行すると歯槽骨の支えが減って歯が動きやすくなります。
後戻りを防ぐ最大のポイントは、リテーナーを真面目に装着することと、原因に対する処置をきちんと終えておくことの2つです。原因への処置と保定がそろって初めて、矯正の結果が長く保たれる土台ができあがります。
まとめ
すきっ歯は「見た目が気になる」だけの状態ではなく、発音・噛み合わせ・歯周組織の健康にもじわじわと影響する不正咬合のひとつです。矯正歯科の立場から見たときに大切なのは、隙間の幅で治療法を決める前に、隙間ができた原因を見極めることだとお伝えしてきました。
歯並びや矯正治療で少し気になることがあれば、まずは一度ご相談にお越しください。矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前では、大学病院で長く矯正・口腔外科治療に携わってきた院長が、お一人お一人の歯並びとライフスタイルに合わせた治療の進め方を、お話ししながら一緒に考えます。
記事監修者

矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前
院長 三木 善樹
大学病院で培った治療と予防の経験を地域の皆様にお届けしていきたいと考えております。
矯正治療は長い時間をかけて歯並びを整える治療です。治療期間を通じて信頼できるパートナーとして寄り添えるよう、スタッフ一同努めてまいります。
- 経歴
- 1993年 徳島大学歯学部卒業
- 1997年 徳島大学大学院歯学研究科修了
- 1997年 徳島大学歯学部矯正学講座助手
- 2004年 札幌医科大学医学部口腔外科学講座助手
- 2007年 札幌医科大学医学部口腔外科学講座助教
- 2022年 矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前院長
- 所属学会
- 日本矯正歯科学会・認定医
- 日本口腔外科学会
- 日本顎変形症学会
- 日本口蓋裂学会
- 日本顎関節学会
- 北海道矯正歯科学会
- 日本骨代謝学会
- 歯科臨床研修医指導医
【矯正治療(自由診療)に関する重要事項】
矯正治療(顎変形症など一部を除く)は公的医療保険が適用されない自由診療です。
- 治療内容:ワイヤーやマウスピース矯正装置を用いて歯を少しずつ動かし、歯並びと噛み合わせを整える治療
- 治療期間・回数:症例により1〜3年程度。月1回程度の通院で調整。装置除去後は2年程度の保定期間が必要(個人差あり)
- 費用の目安:治療費500,000円(税込)、検査料70,000円(税込)、診断料30,000円(税込)、調整料6,000円(税込・毎月)。クリニックによって異なります。
- リスク・副作用:装置装着初期の痛みや違和感、口内炎、歯磨きのしにくさによる虫歯・歯肉炎のリスク、歯根吸収、後戻り、まれに歯髄壊死など
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住所〒060-0003
北海道札幌市中央区北3条西14丁目2-2
ダイアパレス北3条第2 1F -
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