下の歯の矯正は部分矯正で済む?判断基準と治療法を解説
下の歯の矯正は、軽度のガタつきなら数ヶ月〜1年程度の部分矯正で対応できることが多く、噛み合わせや骨格の状態によっては全体矯正が選択肢に入ります。費用は数十万円〜100万円程度と幅があり、自分のケースがどの方法に当てはまるかを知ることが、納得して治療を進める出発点になります。
この記事では、治療法の選び方と費用・期間の目安、治療前に知っておきたい注意点を整理してお伝えします。
下の歯の矯正が部分矯正で済むケース、全体矯正が必要なケース
下の歯の歯並びが気になるとき、最初の分かれ道は部分矯正で対応できるか、全体矯正に進む必要があるかという点です。判断は歯の重なり具合だけでは決まりません。上下の噛み合わせや顎の骨格的な位置関係まで含めて見ないと、後から「下の歯はきれいに並んだのに、噛みにくくなった」という事態が起きます。
ここではどんな症例が部分矯正で済み、どこから全体矯正・場合によっては外科的矯正治療が視野に入るのかを整理します。
部分矯正で対応できるケース
部分矯正で対応できるのは、おおまかに次の3つの条件がそろっている場合です。
- 動かす歯の本数が前歯から犬歯までの範囲に収まる
- 上下の噛み合わせに大きなズレがない
- 奥歯の位置を変える必要がない
下の前歯のごく軽いガタつき、抜歯後の小さなすき間、矯正治療後にわずかに後戻りしてしまった部分の修正などが代表的な対象になります。
部分矯正は動かす歯の本数が少ないため、装置を装着する範囲が狭く、治療期間も短く済みます。費用も全体矯正に比べて抑えられるのが一般的です。一方で、骨格的な要因や奥歯の噛み合わせが関係している歯並びの乱れは、部分矯正の守備範囲ではありません。
「下の前歯だけ動かしたい」という希望があっても、診断で奥歯側に原因があると分かれば、部分矯正だけでは根本的な解決にならないことがあります。
全体矯正が必要になるケース
全体矯正が必要になるのは、下の歯の乱れが噛み合わせや顎の位置と連動しているケースです。「受け口(下顎前突)」、上下の前歯が噛み合わず開いている「開咬」、上の前歯が下の前歯を大きく覆う「過蓋咬合」、奥歯が横にずれて噛み合う「交叉咬合(こうさこうごう)」などが代表例で、下の歯だけを動かしても解決しません。上下の歯列をまとめて整える必要があります。
さらに、顎の骨格そのものに大きなズレがある「顎変形症」と診断されたケースでは、矯正治療と顎の手術を組み合わせる外科的矯正治療が選択肢に入ります。当院では保険適用で対応する体制を整えています。
骨格的なズレは外から見ただけでは判断がつきにくいため、自己判断で部分矯正を選ぶ前に、矯正歯科で診査を受けることをおすすめします。
下の歯の矯正で選べる治療法と費用・期間の目安
下の歯の矯正で選べる治療法は、大きく分けてワイヤー矯正とマウスピース矯正の2つです。それぞれに見た目・装着感・適応範囲の違いがあり、費用と期間の目安にも差が出ます。ここでは治療法ごとの特徴を一覧で整理し、費用を比較するときに見るべきポイントをお伝えします。
治療法ごとの費用と期間の比較
下の歯の矯正で代表的な治療法と、一般的な費用・期間の目安は次のとおりです。費用はクリニックや症例の難易度で幅があるため、あくまで目安としてご覧ください。
| 治療法 | 範囲 | 費用の目安 | 期間の目安 |
|---|---|---|---|
| ワイヤー矯正(部分) | 下の前歯〜犬歯付近 | 30万〜60万円程度 | 数ヶ月〜1年程度 |
| ワイヤー矯正(全体) | 上下の歯列全体 | 70万〜100万円程度 | 1年半〜3年程度 |
| マウスピース矯正(部分) | 下の前歯〜犬歯付近 | 30万〜50万円程度 | 数ヶ月〜1年程度 |
| マウスピース矯正(全体) | 上下の歯列全体 | 70万〜100万円程度 | 1年半〜3年程度 |
| 外科的矯正治療 | 顎の骨格レベル | 保険適用で30万〜80万円程度 | 2〜3年程度 |
ワイヤー矯正は歯の表面にブラケットを取り付けてワイヤーの力で歯を動かす治療法で、当院では目立ちにくいセラミックブラケットとホワイトワイヤーを使用しています。
マウスピース矯正は透明な装置で取り外しが可能ですが、当院では取り扱いがないため、ご希望の場合は対応する矯正歯科にご相談ください。
外科的矯正治療は、顎の骨格的なズレが大きく矯正治療だけでは噛み合わせを安定させられないと診断された場合に選ばれます。顎口腔機能診断料の対象施設で行われ、費用は保険診療の自己負担分のみで済みます。
費用を比較するときに見るべき4つの項目
料金表に書かれた数字だけでは、実際にかかる総額を正確に比較できないことがあります。クリニックごとに料金体系が異なるためです。次の4項目を確認すると、総額の見通しが立てやすくなります。
- 検査料・診断料が治療費に含まれているか別途請求か
- 毎月の再診料・調整料の有無と金額
- 保定装置(リテーナー)の費用が治療費に含まれているか
- 保定期間中の通院費が別途かかるか
例えば「治療費50万円」と書かれていても、毎月の調整料が別途かかれば、2年間の治療で十数万円が加算されます。
参考までに、当院の自由診療の矯正の場合は下記のような内訳になっています。
| 項目 | 費用(税込) |
|---|---|
| 相談料 | 0円 |
| 検査料 | 70,000円 |
| 治療費 (施術管理料・装置代・保定装置料を含む) |
500,000円 |
| 調整料 | 6,000円(毎月) |
検査料・診断料は治療開始前に、調整料は通院ごとに必要です。
料金表の数字だけで判断せず、トータルでいくらかかるかを必ず確認するようにしてください。
下の歯だけの矯正で知っておくべき注意点
下の歯だけを動かす治療には、全体矯正にはない固有の注意点があります。ここでは3つの注意点について順に説明します。
噛み合わせが変わるリスク
下の歯を動かすと、上の歯との接触の仕方が変わります。上下の歯はわずかな位置関係で噛み合っているため、下の歯の角度や位置が変わると、特定の歯にだけ強い力がかかったり、噛み合わせの深さが変わってしまうことがあります。これが続くと、歯の摩耗や顎関節への負担、知覚過敏などにつながる可能性があります。
「見た目の歯並び」だけを目標にすると機能面で不自由が出る点が、下の歯だけの矯正で一番気をつけたい部分です。
このリスクを避けるためには、治療開始前に「下の歯を動かした後、上の歯とどう噛み合うか」を診断段階で検討しておくことが欠かせません。経験のある矯正歯科医師であれば、無理な部分矯正を避けて全体矯正を提案するか、部分矯正でも噛み合わせを崩さない範囲で動かす設計を行います。
歯を削る処置(IPR)の仕組み
下の歯を並べるためのスペースが足りない場合、IPR(Interproximal Reduction)という処置を行うことがあります。これは隣り合う歯と歯の間のエナメル質をごくわずかに削り、歯を動かすためのすき間を作る方法です。エナメル質は歯の一番外側にある硬い層で、厚さは2〜3mmほどあります。
IPRで削る量は1ヶ所あたり0.2〜0.5mm程度に抑えるのが一般的で、歯の神経に近い内側まで削ることはありません。
IPRは、抜歯せずに歯を並べるためにスペースを作る現実的な方法のひとつです。ただし、削る範囲・本数・タイミングは症例によって異なり、必要以上に削れば歯がしみる原因になることもあります。「どの歯を、何ヶ所、合計どれくらい削る予定か」を事前に説明してもらい、納得したうえで治療を始めましょう。
保定期間を守らないと後戻りしやすい
矯正治療で動かした歯は、装置を外した直後の段階では周りの骨や歯ぐきの組織がまだ安定していません。何もしないでいると、歯は動く前の位置に戻ろうとします。これを後戻りと呼びます。
後戻りを防ぐために、装置を外した後はリテーナー(保定装置)を装着して、歯が新しい位置に落ち着くのを助けます。
保定期間の目安は、矯正治療にかかった期間と同じくらい、おおむね1〜3年程度を見ておきます。最初の1年ほどは食事と歯磨きの時間以外はずっと装着し、その後は就寝時のみといった形で、徐々に装着時間を減らしていく流れが一般的です。下の前歯は特に後戻りしやすい部位として知られているため、保定をきちんと続けることが、せっかく整えた歯並びを長く保つための鍵になります。
保定をさぼると、数ヶ月〜数年かけて整えた歯並びが短期間で崩れてしまうことがあります。装置を外した時点で治療が終わったと感じてしまいがちですが、保定までを矯正治療の一部と捉えて、期間を見積もっておきましょう。
部分矯正か全体矯正かを見極める精密検査
初診のご相談では、まず歯並びと噛み合わせの状態を確認したうえで、以下の検査を組み合わせて治療方針を決めていきます。
- 口腔内の写真撮影(現在の歯並び・噛み合わせの記録)
- 歯型の採取(模型での噛み合わせ確認)
- パノラマレントゲン撮影(歯と顎の骨全体の状態確認)
- CT撮影(骨や神経の三次元的な確認)
CT撮影は、顎の骨格や歯の根の位置・形を立体的に把握するために行います。特に外科的矯正治療が視野に入るケースや、親知らずが歯の動きに影響しそうなケースでは、二次元のレントゲンだけでは判断できない情報をCTで補います。
診断時には、検査で得られた情報をもとに「なぜこの治療法を選ぶのか」「下の歯だけを動かすことで起こりうる変化は何か」をご説明し、ご納得いただいたうえで治療をスタートします。
まとめ
下の歯の矯正は、自分のケースが部分矯正で済むのか、全体矯正・外科的矯正治療まで含めた検討が必要なのかを最初に見極めることが、納得のいく結果につながります。費用を比較する際は、表の数字だけでなく検査料・調整料・保定装置料まで含めたトータルで確認してください。
矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前では、大学病院で約30年にわたり矯正治療と口腔外科に携わってきた院長が、噛み合わせや骨格まで含めて診査したうえで、お一人お一人に合った治療方針をご提案します。歯並びにお悩みの方は、まずは無料相談にお越しください。
記事監修者

矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前
院長 三木善樹
大学病院で培った治療と予防の経験を地域の皆様にお届けしていきたいと考えております。矯正治療は長い時間をかけて歯並びを整える治療です。治療期間を通じて信頼できるパートナーとして寄り添えるよう、スタッフ一同努めてまいります。
- 経歴
- 1993年:徳島大学歯学部 卒業
- 1997年:徳島大学大学院歯学研究科 修了
- 1997年:徳島大学歯学部 矯正学講座 助手
- 2004年:札幌医科大学医学部 口腔外科学講座 助手
- 2007年:札幌医科大学医学部 口腔外科学講座 助教
- 2022年:矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前 院長
- 所属学会
- 日本矯正歯科学会 認定医
- 日本口腔外科学会
- 日本顎変形症学会
- 日本口蓋裂学会
- 日本顎関節学会
- 北海道矯正歯科学会
- 日本骨代謝学会
- 歯科臨床研修医指導医
【矯正治療に関する重要事項】
矯正治療は公的医療保険が適用されない自由診療です(顎変形症など一部の症例を除く)。
- 治療内容:ワイヤー矯正装置(セラミックブラケット・ホワイトワイヤー)を用いて歯を移動させ、歯並び・噛み合わせを改善する治療
- 治療期間・回数:一般的に1年半〜3年程度、月1回程度の通院(個人差あり)
- 費用の目安:矯正治療全体で60万〜120万円程度(税込・症例や装置により異なります)。詳しくはクリニックへお問い合わせください
- リスク・副作用:治療中の痛み・違和感、歯根吸収、歯肉退縮、虫歯・歯周病リスクの増加、顎関節症状、後戻りの可能性など
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住所〒060-0003
北海道札幌市中央区北3条西14丁目2-2
ダイアパレス北3条第2 1F -
アクセス地下鉄東西線「西11丁目」・「西18丁目」駅から徒歩10分
JR函館線「桑園」駅から徒歩15分 -
駐車場駐車場はクリニックの裏、マンション敷地内15番ですが、使用中の場合は近隣駐車場に停めてください。受付で駐車券を提示し申告していただけましたら1時間無料チケットをお渡しします。
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