矯正は何歳までできる?年代別の注意点と判断基準を解説
「矯正は何歳までできるのか」というご相談に、年齢の数字で線を引いてお答えすることはありません。一方で、20代と50代では歯ぐきの状態も、被せ物の有無も、生活との折り合いの付け方も違うため、年代に応じて治療中に気をつけたいポイントは変わります。
ご自身の年代に当てはまるポイントを知っておくと、相談の場で具体的な判断につなげやすくなります。
矯正治療に年齢の上限はない
「上限がない」と言える根拠は、歯が動く仕組みそのものにあります。ただし、それを治療として活かせるかどうかは、年齢ではなく別の3つの条件で決まります。以下では、まず歯が動くメカニズムを確認したうえで、治療の可否を分ける条件を順に見ていきます。
歯を動かす仕組みは年齢に関係なく働く
矯正治療で歯が動くのは、装置でかける弱い力に反応して、歯の周りの骨が片側で吸収され、反対側で新しく作られるからです。この骨の入れ替わり(リモデリングと呼びます)は、20代でも70代でも基本的に同じように起こります。動くスピードは大人になると若干ゆっくりになりますが、年齢そのものを理由に矯正を諦める必要はありません。
実際に40代・50代から始められる方は珍しくありませんし、入れ歯やブリッジを避けたいという理由で60代以降に決断される方もいらっしゃいます。動くスピードに個人差はありますが、「動かない」ということではありません。
矯正治療の可否を決める3つの条件
年齢の代わりに本当に重要なのは、次の3つです。
| 条件 | 内容 | 確認方法 |
|---|---|---|
| 歯ぐきと骨の健康 | 歯を支える歯ぐき・歯槽骨が健康であること | 歯周組織検査・レントゲン |
| 残っている歯の本数と状態 | 動かす対象の歯がしっかり残っていること | 口腔内診査 |
| 全身の健康状態 | 治療に耐えられる体調・服薬状況であること | 問診・必要に応じて主治医へ照会 |
特に大切なのが歯ぐきと骨の健康です。歯周病で骨が大きく失われていると、その状態のまま歯を動かすと支えがさらに弱くなってしまいます。この場合は矯正の前に歯周病の治療を行い、状態を落ち着かせてから矯正に入る、という順序が必要になります。
骨粗しょう症のお薬(ビスホスホネート系など)を長く服用されている方は、抜歯や外科処置に注意が必要なため、服薬状況は必ず伝えてください。
年代別に知っておきたい矯正治療のポイント
矯正治療そのものに年齢制限はありませんが、年代によって治療中の優先順位は変わります。20代と50代では、歯ぐきの状態も、お仕事や生活への影響の感じ方も違います。ここでは年代ごとに、特に意識しておきたい点をまとめます。
20〜30代:選択肢が最も広い時期
20〜30代は、歯ぐきや歯を支える骨の状態が比較的安定している方が多く、矯正の選択肢が広く取れる時期です。骨格的なズレを伴う噛み合わせの場合は外科矯正という選択肢も検討しやすく、治療計画の自由度が高くなります。
この年代で矯正を始める方の多くは、就職・結婚・人前に出る仕事への転職といったライフイベントがきっかけになっています。見た目の改善だけでなく、噛み合わせを整えることで将来的な歯のトラブルを予防できるという点も、早めに取り組むメリットの一つです。
40〜50代:歯周病の管理が治療成功のカギ
40〜50代から矯正を始める場合、歯周病の管理が治療の成否を分けます。厚生労働省の令和4年歯科疾患実態調査では、4mm以上の歯周ポケットを持つ方の割合が35〜44歳で34.7%、45〜54歳で43.7%、55〜64歳で47.5%と、年代が上がるごとに増えていくことが分かっています。つまりこの年代の半数近くは、矯正を始める前に何らかの歯周組織のチェックが必要な状態にあるということです。
歯周病が進んでいる状態でそのまま装置を付けると、歯を支える骨がさらに減ってしまい、せっかく動かした歯が安定しないという結果になります。この年代の方には、矯正に入る前にしっかりと歯周組織検査を行い、必要であれば歯周病治療を済ませてから装置を付ける流れをご提案しています。
多くの場合、適切な歯周治療を経れば矯正に進めます。
60代以降:治療のゴール設定がより重要になる
60代以降から矯正を検討される方は、目的が若い世代と少し変わります。「見た目を整えたい」よりも、「噛みにくいところを治したい」「これから入れ歯やブリッジを作るのに、土台の歯並びを整えたい」というご相談が増える年代です。
この年代では、すでに歯を失った場所がある、被せ物が複数ある、歯ぐきが下がっているなど、お口の状態が複雑になっていることがよくあります。そのため、「すべての歯をきれいに並べる」ことよりも、噛める範囲をしっかり確保する、土台を整える、といったゴール設定が大事になります。
骨粗しょう症の治療薬を服用されている方や、糖尿病・心疾患などの持病がある方は、治療開始前に主治医と情報共有をさせていただきます。お薬の種類や全身の状態によっては、抜歯やインプラントとの併用ができない場合もありますので、初診の時点で服薬中のお薬がわかる資料(お薬手帳など)をお持ちいただくとスムーズです。
「もう遅いかも」と感じている方へ:年齢よりも重要なこと
「歯周病があるから」「すでに被せ物がいくつもあるから」と矯正を諦めている方にお伝えしたいのは、年齢や口腔内の状態が複雑であること自体は治療を断念する理由にはならないということです。複雑な状態には、それに合わせた治療計画が必要になるだけです。
ここではよくいただくご相談を2つ取り上げます。
歯周病があっても矯正は諦めなくてよい
前述のとおり、歯周病の治療と矯正治療は両立できます。順番が大事で、まず歯周病の状態を落ち着かせてから矯正に進むという流れになります。具体的には、歯石除去や歯ぐきの炎症を抑える治療を経て、歯周ポケットの深さや出血の状態が安定したことを確認してから装置を付けます。
歯並びが悪いまま放置すると、歯ブラシが届きにくい場所にプラークが溜まり、歯周病が進みやすくなるという面もあります。きれいに並んだ歯はご自身でケアしやすく、結果として歯周病の管理にもプラスに働くことが多くあります。歯周病の進行度や残っている骨の量によって治療計画は変わるため、まずは現状を正確に把握する検査から始めましょう。
被せ物や欠損歯がある場合の対応
被せ物(差し歯・クラウン)がある歯でも、土台となる歯根がしっかりしていれば矯正で動かすことができます。ただし装置を付けるブラケットは、被せ物の素材によっては付きにくい場合があり、そのときは仮歯に置き換えて治療する、装置の付け方を工夫する、といった対応をします。
すでに歯を失った場所がある場合は、矯正でその隙間を埋めていくのか、矯正で土台を整えてからインプラントやブリッジで補うのか、二つの方向性があります。どちらが向いているかは、隙間の大きさ・残っている歯の状態・噛み合わせ全体のバランスによって変わるため、初診で全体を診た上でご相談する流れになります。
「複数の被せ物があるから無理」と決めつけず、現状から組み立てられる選択肢を一緒に考えていく姿勢で診察させていただきます。
まとめ
矯正治療に年齢の上限はありません。判断材料になるのは年齢ではなく、歯ぐきと骨の健康状態、残っている歯の本数、全身の健康状態の3つです。
「もう遅いかも」と感じていらっしゃる方も、まずは現状を把握する検査を受けていただくところから始めれば、いまの状態から組み立てられる選択肢が見えてきます。
矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前では、初回相談を無料で承っております。年齢のことで迷っていらっしゃる場合も、いまのお口の状態をうかがった上で、無理のない進め方を一緒に考えてまいります。気になることがあれば、どうぞお気軽にお話しください。
記事監修者

矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前
院長 三木 善樹
大学病院で培った治療と予防の経験を地域の皆様にお届けしていきたいと考えております。
矯正治療は長い時間をかけて歯並びを整える治療です。治療期間を通じて信頼できるパートナーとして寄り添えるよう、スタッフ一同努めてまいります。
- 経歴
- 1993年 徳島大学歯学部卒業
- 1997年 徳島大学大学院歯学研究科修了
- 1997年 徳島大学歯学部矯正学講座助手
- 2004年 札幌医科大学医学部口腔外科学講座助手
- 2007年 札幌医科大学医学部口腔外科学講座助教
- 2022年 矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前院長
- 所属学会
- 日本矯正歯科学会・認定医
- 日本口腔外科学会
- 日本顎変形症学会
- 日本口蓋裂学会
- 日本顎関節学会
- 北海道矯正歯科学会
- 日本骨代謝学会
- 歯科臨床研修医指導医
【矯正治療(自由診療)に関する重要事項】
矯正治療(顎変形症など一部を除く)は公的医療保険が適用されない自由診療です。
- 治療内容:ワイヤーやマウスピース矯正装置を用いて歯を少しずつ動かし、歯並びと噛み合わせを整える治療
- 治療期間・回数:症例により1〜3年程度。月1回程度の通院で調整。装置除去後は2年程度の保定期間が必要(個人差あり)
- 費用の目安:治療費500,000円(税込)、検査料70,000円(税込)、診断料30,000円(税込)、調整料6,000円(税込・毎月)。クリニックによって異なります。
- リスク・副作用:装置装着初期の痛みや違和感、口内炎、歯磨きのしにくさによる虫歯・歯肉炎のリスク、歯根吸収、後戻り、まれに歯髄壊死など
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住所〒060-0003
北海道札幌市中央区北3条西14丁目2-2
ダイアパレス北3条第2 1F -
アクセス地下鉄東西線「西11丁目」・「西18丁目」駅から徒歩10分
JR函館線「桑園」駅から徒歩15分 -
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