歯列矯正でほうれい線は深くなる?目立つケース・目立たないケースを矯正認定医が解説
「歯列矯正をしたらほうれい線が深くなった」という声をネットで見かけて、矯正治療に踏み出せずにいるという声を聞くことがあります。結論から言えば、矯正治療そのものがほうれい線を深くする可能性は限定的です。ただし、口元の骨格的な変化量が大きい場合には、見え方が変わることがあります。
この記事では、ほうれい線と矯正治療の関係を、骨格から口元を診てきた立場でお伝えします。
歯列矯正でほうれい線が変わることはあるのか
矯正治療は歯と骨にアプローチする治療であり、皮膚そのものを変化させる治療ではありません。ではなぜ「矯正でほうれい線が変わった」という声が出るのか。まず、ほうれい線が何によって形成されるかを整理した上で、矯正治療との接点を明らかにします。
ほうれい線の正体は皮膚のたるみと脂肪の下垂
ほうれい線は医学用語では「鼻唇溝(びしんこう)」と呼ばれ、鼻の両脇から口角にかけて走る溝を指します。一般的な「シワ」とは成り立ちが異なり、頬の脂肪や皮膚が重力で下垂することで溝が深くなります。
この溝が目立つかどうかを決める主な要因は3つあります。
1つ目は真皮のコラーゲンとエラスチンの減少です。加齢や紫外線ダメージによって真皮の線維芽細胞の働きが衰え、コラーゲンやエラスチンの産生量が減ります。これにより皮膚のハリが低下し、頬を支えきれなくなります。
2つ目は頬の脂肪組織の下垂です。加齢とともに頬骨付近の脂肪パッドが下方へずれ落ち、鼻唇溝の上に乗り上げることで溝が深く見えるようになります。
3つ目は表情筋の衰えです。口輪筋や頬筋といった口周りの筋肉が弱まると、頬を引き上げる力が落ちてたるみが進行します。
つまり、ほうれい線の主因はあくまで「皮膚・脂肪・筋肉の加齢変化」です。歯や歯槽骨の位置が変わる矯正治療は、この3つに直接作用する治療ではありません。
矯正治療が間接的に影響するのは「口元の支え」が変わるとき
矯正治療は皮膚を直接変えませんが、歯列の位置が変わると、その上に乗っている唇や口周りの軟組織の「張り」が変化します。とくに前歯が大きく後方へ移動する症例では、それまで歯や歯槽骨によって内側から支えられていた口元の皮膚のテンションが変わり、鼻の下や口角あたりにわずかな「余り」が生じることがあります。
この軟組織の変化が、ほうれい線の見え方に影響する可能性があるのです。ただし、これは「ほうれい線ができた」のではなく、もともと存在していた鼻唇溝が、口元の張りが減ったことで相対的に目立つようになった、というのが正確な表現です。すべての矯正治療でこの変化が起きるわけではなく、口元の移動量が大きいケースに限られます。
矯正後にほうれい線が目立つと感じやすいケース
口元の変化量が大きい治療で、ほうれい線の見え方が変わる可能性があります。具体的にどのような場合に起きやすいのかを整理します。
抜歯矯正で口元が大きく後退したケース
矯正治療で小臼歯(前歯と奥歯の間にある小さい奥歯)を抜歯して前歯を後方に移動させると、口元全体が内側に下がります。もともと歯列が前に突出していた方(いわゆる口ゴボや出っ歯の方)の場合、この後退量が大きくなることがあります。
前歯が後退すると、上唇を内側から支えていた力が減り、鼻の下から口角にかけての皮膚にたるみが出やすくなります。これが鼻唇溝を目立たせる原因になります。ただし、抜歯をしたからといって必ずほうれい線が深くなるわけではなく、後退量と軟組織の適応力によって結果は異なります。皮膚の弾力が保たれている若い方では、口元が後退しても軟組織が追従して目立たないことが多いです。
出っ歯の改善で唇の張りが大きく変わったケース
上顎前突(出っ歯)の方は、突出した前歯が上唇を前方に押し出しているため、鼻の下の皮膚がピンと張った状態になっています。この状態では、本来あるはずの鼻唇溝が引き伸ばされて目立ちにくくなっていることがあります。
矯正治療で前歯を引っ込めると、唇の張りが解消されて皮膚が本来の位置に戻ります。これは矯正によって新しくほうれい線が「できた」のではなく、もともとの溝が見えるようになっただけです。出っ歯の程度が強いほどこの変化を感じやすい傾向があります。
矯正期間中の咀嚼量の減少
矯正治療中は装置の違和感や調整直後の痛みから、硬いものを避けたり食事量が減ったりすることがあります。食事で噛む回数が減ると、口周りの表情筋(口輪筋・頬筋・咬筋など)を使う機会も減ります。
表情筋は頬のたるみを防ぐ土台のひとつです。矯正中に咀嚼量が大幅に減った状態が長く続くと、筋力の低下によって頬の支えが弱まり、ほうれい線が矯正前より目立つと感じる可能性があります。これは矯正治療そのものの影響というよりも、治療中の生活習慣の変化に伴うものです。
矯正中もできる範囲でしっかり噛むことが、口周りの筋力維持につながります。
矯正によってほうれい線が目立ちにくくなるケース
矯正治療でほうれい線が「深くなる」話ばかりが注目されがちですが、逆に目立ちにくくなるケースもあります。
噛み合わせの改善で左右の筋バランスが整う
噛み合わせが悪いと、無意識のうちに片側ばかりで噛む癖がつきます。片側咀嚼が習慣化すると、使われない側の表情筋が弱まり、左右で頬のたるみ方に差が出ることがあります。その結果、片側のほうれい線だけが深く見えるケースがあります。
矯正治療で噛み合わせが整うと、左右均等に噛めるようになり、表情筋のバランスが回復します。これによって片側だけ深かったほうれい線が目立ちにくくなることがあります。顎変形症の治療でも、骨格レベルで噛み合わせを正すことで口周りの筋肉の使い方が変わり、顔全体の印象が変化するケースを多く経験しています。
口ゴボの改善で顔全体の印象が変わる
口ゴボ(上下顎前突)の方が矯正治療で口元を後退させると、横顔のバランスが整い、Eライン(鼻先と顎先を結ぶ線)に対して唇が理想的な位置に近づきます。口元が整うことで顔全体の印象が引き締まり、ほうれい線が仮にわずかに見えるようになったとしても、「前より老けた」ではなく「顔がすっきりした」と感じる方が多いです。
口元の突出が改善されると、相対的に鼻や顎の輪郭が際立ち、顔全体として若々しい印象になることがあります。ほうれい線単体を見るのではなく、顔全体のバランスで考えることが重要です。
歯列矯正でほうれい線を気にしないために押さえておきたいこと
矯正治療を検討中の方が、ほうれい線への影響を過度に心配する必要はありません。ただし、いくつかのポイントを押さえておくと安心です。
カウンセリングで口元の変化量を確認する
矯正治療のカウンセリングでは、レントゲンや歯型の分析結果をもとに、歯をどの方向にどれだけ動かすかの計画が提示されます。抜歯をする場合は、前歯の後退量がどの程度になるかを具体的に聞いておくとよいでしょう。
前歯の後退量と口元の軟組織の変化は比例する傾向があるため、後退量が大きい計画であれば、口元の見え方の変化について事前に確認しておくことが大切です。
表情筋トレーニングと日常のスキンケア
矯正中・矯正後にほうれい線が気になる場合、自分でできる対策は2つあります。
1つ目は表情筋のトレーニングです。口輪筋や頬筋を意識的に動かすことで、頬を支える筋力を維持できます。代表的な方法として、口を閉じたまま舌を使ってほうれい線の内側をなぞるように動かす「舌アイロン」や、口を大きく開けて「あ・い・う・え・お」と発音する体操があります。
1日3〜5分程度を目安に、無理なく継続することがポイントです。ただし、表情筋トレーニングだけでほうれい線が消えるわけではありません。あくまで筋力維持による予防的なケアです。
2つ目は保湿と紫外線対策です。ほうれい線の主因は真皮のコラーゲン減少と皮膚の乾燥です。保湿ケアと紫外線対策を日常的に行うことが、ほうれい線の進行を防ぐ最も基本的な方法です。矯正治療と直接の関係はありませんが、矯正期間中(一般的に1〜3年程度)に肌のケアをおろそかにすると、加齢による変化が重なってほうれい線が目立ちやすくなります。
歯列矯正とほうれい線に関するよくある質問
矯正終了後にほうれい線が気になる場合、改善する方法はありますか?
まず、ほうれい線が矯正によるものか加齢によるものかを見極めることが大切です。矯正による前歯の後退がリップサポートの低下を招いている場合は、口輪筋や頬筋を意識的に動かす表情筋トレーニングで口周りの筋力を維持することが補助的な対策になります。保湿ケアと紫外線対策も、皮膚のハリを保つうえで重要です。
これらの方法で改善が見られない場合は、美容皮膚科での治療を検討する選択肢もあります。
抜歯しない矯正ならほうれい線への影響はありませんか?
非抜歯の矯正では前歯の後退量が小さいため、口元の軟組織の変化も小さくなります。そのため、ほうれい線の見え方が変わるリスクは抜歯矯正に比べて低いです。ただし、非抜歯でも歯列の拡大や前歯の位置調整は行うため、まったく影響がないとは断言できません。
症例ごとに判断が必要です。
ほうれい線が深くなるのが心配で矯正に踏み出せません
ほうれい線への影響は矯正治療全体から見ると限定的なケースです。噛み合わせの改善は、虫歯・歯周病の予防や顎関節への負担軽減など、口腔内の健康に大きなメリットがあります。ほうれい線の心配だけで矯正治療を見送ると、歯並びや噛み合わせの問題が将来的に悪化する可能性もあります。
カウンセリングで治療計画を確認し、口元の変化量について説明を受けた上で判断することをおすすめします。
まとめ
歯列矯正でほうれい線が深くなる可能性はゼロではありませんが、すべての方に起きるわけではありません。影響が出やすいのは、抜歯によって口元が大きく後退するケースや、もともと出っ歯で口元の皮膚の張りが強かったケースです。一方で、噛み合わせが整うことで口周りの筋バランスが改善し、ほうれい線が目立ちにくくなるケースもあります。
ほうれい線の最大の原因は加齢による皮膚のたるみや脂肪の下垂であり、矯正治療の影響は限定的です。過度に心配する必要はありませんが、気になる方はカウンセリングの段階で口元の変化量について確認しておくと安心です。
矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前では、顎変形症・外科矯正の豊富な経験を活かし、骨格レベルで噛み合わせを分析した上で矯正治療を行っています。口元の変化やほうれい線への影響が心配な方も、お気軽にご相談ください。
記事監修者

矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前
院長 三木 善樹
大学病院で培った治療と予防の経験を地域の皆様にお届けしていきたいと考えております。
矯正治療は長い時間をかけて歯並びを整える治療です。治療期間を通じて信頼できるパートナーとして寄り添えるよう、スタッフ一同努めてまいります。
- 経歴
- 1993年 徳島大学歯学部卒業
- 1997年 徳島大学大学院歯学研究科修了
- 1997年 徳島大学歯学部矯正学講座助手
- 2004年 札幌医科大学医学部口腔外科学講座助手
- 2007年 札幌医科大学医学部口腔外科学講座助教
- 2022年 矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前院長
- 所属学会
- 日本矯正歯科学会・認定医
- 日本口腔外科学会
- 日本顎変形症学会
- 日本口蓋裂学会
- 日本顎関節学会
- 北海道矯正歯科学会
- 日本骨代謝学会
- 歯科臨床研修医指導医
【歯列矯正に関する重要事項】
歯列矯正は公的医療保険が適用されない自由診療です(顎変形症など一部の症例を除く)。
- 治療内容:ワイヤー矯正(セラミックブラケット・ホワイトワイヤー)を用いて歯列を整える治療
- 治療期間・回数:一般的に1〜3年程度、月1回程度の通院(個人差あり)
- 費用の目安:矯正治療の費用は症例の難易度やクリニックにより異なります。詳しくは矯正歯科・口腔ケア クリニック知事公館前へお問い合わせください
- リスク・副作用:歯の痛み、歯根吸収、歯肉退縮、虫歯・歯周病リスクの増加、治療後の後戻りなど
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住所〒060-0003
北海道札幌市中央区北3条西14丁目2-2
ダイアパレス北3条第2 1F -
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JR函館線「桑園」駅から徒歩15分 -
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