小児矯正はスポーツに影響する?競技別の注意点とケガを防ぐ対策
お子さんがスポーツを続けているご家庭から、「矯正装置をつけたまま練習や試合をしても大丈夫でしょうか」というご質問をよくいただきます。結論から言えば、小児矯正中であっても、ほとんどのスポーツは問題なく続けられます。 ただし、競技の種類によって注意すべき点が異なるため、事前に把握しておくことが大切です。
小児矯正中でもスポーツは続けられるか
矯正治療を始めるにあたって「スポーツをやめなければならないのでは」と心配される保護者の方は少なくありません。しかし、矯正装置が入っていることを理由にスポーツを制限する必要は、ほとんどの場合ありません。
多くのスポーツは矯正中も問題なく続けられる
水泳、陸上競技、テニス、卓球、バドミントン、体操、ダンスといった非コンタクト系のスポーツでは、矯正装置がプレーの妨げになることはほぼありません。装置に慣れるまでの数日間は多少の違和感がありますが、1〜2週間もすればお子さん自身が装置の存在を気にせず運動できるようになるのが一般的です。
学校の体育の授業についても同様で、マット運動や跳び箱のような種目を含め、通常どおり参加できます。ただし、顔面に衝撃を受ける可能性がある種目(ドッジボールなど)では、ボールが口元に当たらないよう気をつける意識を持つだけで十分です。
注意が必要なのは顔や口元に衝撃を受けやすい競技
柔道、空手、ラグビー、サッカー、バスケットボール、野球といったコンタクト系のスポーツでは、相手との接触やボールの衝突によって口元に力が加わる場面があります。このような競技では、矯正装置が頬の内側や唇を傷つけるリスクが多少高まるため、スポーツ用マウスガードの使用や装置の保護対策を検討する必要があります。
ただし、「コンタクトスポーツだから矯正できない」ということではありません。適切な対策を講じれば、柔道やラグビーをしながら矯正治療を進めているお子さんもたくさんいます。
コンタクトスポーツと非コンタクトスポーツで小児矯正の対策が変わる
一口にスポーツといっても、競技によって口元への衝撃リスクは大きく異なります。お子さんが取り組んでいる競技に合わせた対策を知っておくと、安心して治療と運動を両立できます。
コンタクトスポーツでの注意点と対策
サッカー、バスケットボール、柔道、空手、ラグビー、野球(特にキャッチャー)など、相手やボールとの接触がある競技は、口元にぶつかる可能性を前提にした準備が必要です。
| 競技 | 想定されるリスク | 対策 |
|---|---|---|
| サッカー | ヘディング時の接触、相手との衝突 | スポーツ用マウスガードの使用 |
| バスケットボール | ゴール下での接触、肘打ち | スポーツ用マウスガードの使用 |
| 柔道・空手 | 投げ技・打撃時の顔面接触 | マウスガード使用、練習内容の調整 |
| ラグビー | タックル時の衝突 | マウスガード使用(中高生は義務化) |
| 野球 | デッドボール、送球の衝突 | キャッチャーはフェイスガード+マウスガード |
柔道や空手のように直接的に顔面へ衝撃を受ける可能性がある競技では、練習のメニューによって装置の保護が特に重要になります。乱取りや組手の際にはスポーツ用マウスガードを装着し、装置と口腔内の粘膜を保護することが基本的な対策です。
非コンタクトスポーツでの注意点
水泳、陸上、テニス、バドミントン、体操、ダンスなどの競技では、他者との接触がほとんどないため、矯正装置による問題が起きることはまれです。
ただし、いくつかの点には意識を向けておくとよいでしょう。
水泳ではプールの塩素が装置の金属部分に影響するのではと心配される方もいますが、通常のプール利用で矯正装置に問題が生じることはありません。テニスやバドミントンでは、ラケットが顔に当たる事故はまれに起きるものの、日常的なリスクとしては低い部類です。
非コンタクトスポーツでは特別な対策なしに矯正治療を進められることがほとんどで、お子さん自身が装置に慣れさえすれば、パフォーマンスへの影響もほとんどありません。
矯正装置によるケガのリスクと具体的な予防策
スポーツ中の衝撃で矯正装置が口の中を傷つけるケースは、実際に起こりえます。どのようなケガが起きやすいのか、どう予防すればよいのかを具体的に知っておくと、いざというときに慌てずに対処できます。
ワイヤー矯正中に起きやすい口の中のケガ
ワイヤー矯正ではブラケット(歯に接着する小さな装置)とワイヤーが口の中にあるため、強い衝撃を受けたときに以下のようなケガが生じることがあります。
ブラケットの角が頬の内側や唇の裏に当たって粘膜に傷ができるケースが最も多く、特に装置をつけた直後や調整直後は粘膜がまだ装置に慣れていないため傷つきやすい状態です。また、ワイヤーの端が飛び出して頬に刺さったり、衝撃でブラケットが外れたりすることもあります。
こうしたケガの多くは軽微なもので、矯正用ワックス(装置の突起部分に貼りつけて粘膜を保護するシリコン素材)を使えば応急処置ができます。ワイヤーが頬に刺さって痛い場合は、矯正用ワックスをワイヤーの先端に付けて保護し、できるだけ早く矯正歯科を受診してください。
スポーツ用マウスガードで装置と口を守る
コンタクトスポーツをしているお子さんには、スポーツ用マウスガードの使用が最も有効な予防策です。マウスガードは衝撃を吸収・分散させるもので、装置が粘膜に食い込むことを防ぎ、歯の破折や脱臼といった深刻なケガのリスクも大幅に下げます。
マウスガードには市販品(ボイル&バイトタイプ)と歯科医院でつくるカスタムメイドの2種類があります。
| 種類 | 特徴 | 矯正中の適合 |
|---|---|---|
| 市販品(ボイル&バイトタイプ) | お湯で軟化させて自分で成形 | 矯正装置の上からはフィットしにくい |
| カスタムメイド(歯科医院作製) | 精密な型取りで個人の歯型に合わせる | 装置の形状に合わせて作製でき、保護力が高い |
ワイヤー矯正中のお子さんには、歯科医院でつくるカスタムメイドのマウスガードをおすすめします。矯正装置の形状に合わせて精密に作製できるため、装着感がよく、装置への不要な圧力も避けられます。
注意すべき点として、矯正治療は歯を少しずつ動かしていく治療であるため、歯の位置が変わるとマウスガードが合わなくなることがあります。定期的な調整や再作製が必要になることを念頭に置いておきましょう。なお、ラグビーでは中学生・高校生の試合でマウスガードの装着が義務化されています。
噛み合わせが整うとスポーツにも好影響がある
小児矯正とスポーツの関係は「装置をつけたまま運動できるか」だけではありません。矯正治療によって噛み合わせが改善されることで、スポーツのパフォーマンスにプラスの影響が生まれる可能性があります。
噛み合わせと筋力・身体バランスの関係
奥歯でしっかり噛みしめると全身の筋肉が安定しやすくなることが知られています。東京歯科大学スポーツ歯学研究室の武田友孝教授によると、歯をしっかり食いしばることで筋力が4〜6%程度アップするとされています。また、小中学生を対象とした調査では、噛む力と握力の間に相関関係があることも報告されています。
噛み合わせが不安定だと、瞬間的に力を出す場面で十分に食いしばれないだけでなく、身体の重心バランスにも影響します。特に奥歯の噛み合わせを失うと体の揺れ(重心動揺)が大きくなることが指摘されており、バランスが重要な競技ではパフォーマンスに影響しうる要因のひとつです。
口呼吸の改善が持久力に与える影響
歯並びや噛み合わせの問題があるお子さんの中には、口がうまく閉じられず日常的に口呼吸をしている場合があります。口呼吸は鼻呼吸に比べて取り込む空気の質が低く、持久系のスポーツでは息が上がりやすくなる原因のひとつです。
小児矯正で歯列や顎のバランスが整うと、口を自然に閉じやすくなり、鼻呼吸への移行が促されることがあります。鼻呼吸では空気が加温・加湿されてから肺に届くため、呼吸効率が上がり、結果として持久力の改善につながる可能性があります。
小児矯正の開始時期とスポーツの両立を考える
「いつ矯正を始めるのがよいか」は、スポーツをしているお子さんをお持ちのご家庭では特に気になるポイントです。
1期治療(6〜12歳頃)に始めるメリット
小児矯正の1期治療は、乳歯と永久歯が混在する混合歯列期(一般的に6〜12歳頃)に行う治療で、顎の成長を利用して歯が並ぶ土台を整えることを目的としています。この時期は顎の骨がまだ柔軟なため、成人になってからでは難しい骨格的なアプローチが可能です。
スポーツとの関係でいえば、小学校低学年〜中学年の時期に1期治療を始めておくと、部活動が本格化する中学・高校の時期には治療が終了または安定期に入っているという計画が立てやすくなります。中学以降の2期治療が必要になった場合でも、1期治療で土台が整っていれば治療期間が短縮されることがあります。
部活動が本格化する前に矯正を進めるという選択
中学・高校の部活動では練習時間が長くなり、大会や遠征も増えます。矯正治療は月に1回程度の通院が必要なため、部活動のスケジュールとの調整が課題になることがあります。
小学生のうちに1期治療を進めておくことで、部活動が忙しくなる時期の通院負担を軽くすることができます。特にコンタクトスポーツに本格的に取り組む予定があるお子さんの場合、装置を外した状態で競技に集中できる期間を確保するという意味でも、早めに矯正歯科に相談しておくことをおすすめします。
1期治療の費用は一般的に20万〜50万円程度(税込)が目安ですが、症例の難易度やクリニックによって異なります。
小児矯正とスポーツに関するよくある質問
スポーツ中に装置が壊れた場合、修理費用は別途かかりますか?
クリニックの料金体系によって異なります。矯正治療費に装置の修理・再接着が含まれている(トータルフィー制)場合は、追加費用なしで対応してもらえるのが一般的です。一方、処置ごとに費用が発生する料金体系の場合は、ブラケットの再接着やワイヤーの交換に数千円程度かかることがあります。
スポーツをしているお子さんは装置の破損リスクが高くなるため、治療開始前に修理費用の扱いを確認しておくと安心です。
試合の日だけ矯正装置を外すことはできますか?
ワイヤー矯正の場合、ブラケットとワイヤーは歯に固定されているため、試合のたびに着脱することはできません。取り外し式の装置(拡大床など)を使用している場合は、練習や試合の間だけ外すことが可能です。外した装置はケースに入れて安全に保管し、終わったらすぐに再装着することが大切です。
外している時間が長くなると、治療計画に影響する場合があります。
合宿や遠征中に矯正装置が壊れた場合、どうすればよいですか?
まず矯正用ワックスで応急処置をしてください。ワックスはブラケットの角やワイヤーの飛び出しに貼りつけて粘膜を保護するもので、矯正治療中は常に携帯しておくことをおすすめします。合宿や遠征の場合はすぐに通院できないことが多いため、出発前にワックスと小さなケース(装置が外れた場合の保管用)を持ち物に入れておくと安心です。
痛みが強い場合は電話で矯正歯科に連絡し、応急処置の指示を仰いでください。帰宅後はできるだけ早く受診して、装置の修理を受けてください。
まとめ
小児矯正中でもほとんどのスポーツは問題なく続けられます。対策のポイントは、お子さんが取り組んでいる競技に合わせた準備をしておくことです。
非コンタクトスポーツであれば特別な準備は不要です。コンタクトスポーツの場合は、歯科医院で作るカスタムメイドのスポーツ用マウスガードを用意しておくと、装置によるケガのリスクを大幅に減らせます。
また、矯正治療で噛み合わせが整うことは、食いしばりの安定や口呼吸の改善を通じて、スポーツのパフォーマンスにも好影響を与える可能性があります。スポーツと矯正を「どちらかを犠牲にする関係」ではなく、「どちらも得られる関係」として捉えていただければと思います。
矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前では、日本矯正歯科学会認定医がお子さんの歯並びと生活環境に合わせた治療計画をご提案しています。スポーツとの両立が気になる方は、お気軽にご相談ください。
記事監修者

矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前
院長 三木 善樹
大学病院で培った治療と予防の経験を地域の皆様にお届けしていきたいと考えております。
矯正治療は長い時間をかけて歯並びを整える治療です。治療期間を通じて信頼できるパートナーとして寄り添えるよう、スタッフ一同努めてまいります。
- 経歴
- 1993年 徳島大学歯学部卒業
- 1997年 徳島大学大学院歯学研究科修了
- 1997年 徳島大学歯学部矯正学講座助手
- 2004年 札幌医科大学医学部口腔外科学講座助手
- 2007年 札幌医科大学医学部口腔外科学講座助教
- 2022年 矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前院長
- 所属学会
- 日本矯正歯科学会・認定医
- 日本口腔外科学会
- 日本顎変形症学会
- 日本口蓋裂学会
- 日本顎関節学会
- 北海道矯正歯科学会
- 日本骨代謝学会
- 歯科臨床研修医指導医
【小児矯正に関する重要事項】
小児矯正は公的医療保険が適用されない自由診療です(顎変形症など一部の症例は保険適用)。
- 治療内容:ワイヤー矯正(セラミックブラケット・ホワイトワイヤー)等の矯正装置を用いて歯並びと噛み合わせを改善する治療
- 治療期間・回数:1期治療は1〜3年程度、月1回程度の通院。2期治療が必要な場合はさらに1〜3年程度(個人差あり)
- 費用の目安:1期治療20万〜50万円程度、2期治療30万〜60万円程度(税込・クリニックにより異なります)。詳しくはクリニックへお問い合わせください
- リスク・副作用:装置による口内炎・粘膜の傷、装置装着中の歯磨きのしにくさによる虫歯・歯周病リスクの増加、歯根吸収、治療後の後戻りの可能性など
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住所〒060-0003
北海道札幌市中央区北3条西14丁目2-2
ダイアパレス北3条第2 1F -
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