子供の歯科矯正に補助金は使える?費用を抑える制度と確認手順
お子様の歯科矯正の治療費は、症状の診断によって全額自費負担から保険適用まで振り分けられるため、自由診療の総額だけを比較して相談に行くと、本来なら使えたはずの制度を見落とすことがあります。
本記事では、保護者の方が事前に押さえておきたい各制度の対象条件と、最初の相談で何を確認すべきかを矯正歯科の立場から整理してお伝えします。
子供の歯科矯正に「補助金」は使えるのか
矯正治療費を一律に補助する「補助金」という制度は、国にも自治体にも基本的にありません。一般に「補助金」と呼ばれているものは、保険適用・自立支援医療(育成医療)・医療費控除の3つの公的制度のいずれかを指しています。それぞれ対象となるお子様と効き方が異なります。
| 制度 | 効き方 | 対象になるお子様 |
|---|---|---|
| 保険適用 | 自己負担が3割(未就学児は2割)になる | 厚生労働大臣が定める先天性疾患、永久歯3歯以上の萌出不全、外科手術を伴う顎変形症のいずれかに該当する場合 |
| 自立支援医療(育成医療) | 保険適用治療の自己負担をさらに軽減(所得に応じた月額上限あり) | 18歳未満で、唇顎口蓋裂など対象となる身体障害があり歯科矯正が必要と認められる場合 |
| 医療費控除 | 確定申告で所得税・住民税の一部が還付される | 機能的な不正咬合の改善が目的の場合(自由診療でも対象になり得る) |
| 子ども医療費助成 | 保険診療の自己負担分を自治体が助成 | 自治体が定める年齢内のお子様で、保険適用の治療を受けた場合のみ |
自費治療そのものを国・自治体が直接補助する制度はありませんが、診断によって保険適用や自立支援医療の対象になれば、自己負担は大きく変わります。
保険適用になるケースとその条件
健康保険で矯正治療を受けるには、診断名・医療機関・治療内容の3つの条件を同時に満たす必要があります。1つでも外れると保険適用にならないため、順に確認していきましょう。
保険が適用される3つの条件
健康保険の対象になる矯正治療は、以下の3つに限定されています。
- 厚生労働大臣が定める先天性疾患(66項目)に起因した咬合異常
- 前歯および小臼歯の永久歯のうち3歯以上の萌出(ほうしゅつ)不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る)
- 顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る)の手術前後の矯正歯科治療
1の対象疾患には、唇顎口蓋裂、ダウン症候群、ターナー症候群、ゴールデンハー症候群などが含まれます。「その他顎・口腔の先天異常」という包括項目もあり、リストにない疾患でも該当する場合があります。
2の「3歯以上の萌出不全」は、永久歯が歯ぐきの中に埋まったまま生えてこない状態を指し、歯ぐきを切開して歯を出す処置が必要なケースに限られます。3の顎変形症は、骨格のズレが大きく矯正治療単独では改善が難しいケースが対象で、お子様の場合は二期治療以降に外科矯正へ移行するのが一般的です。
保険適用で矯正できる医療機関の条件
保険適用の矯正治療を受けるには、地方厚生(支)局長に届け出を行った「指定自立支援医療機関(育成・更生医療)」または施設基準を満たした医療機関で受診する必要があります。日本矯正歯科学会ではこれらを「矯診」「顎診」と分類しています。
すべての矯正歯科で保険治療ができるわけではありません。お子様が保険適用に該当しそうな場合、診断書を取った後で別の医療機関に転院する必要が出てくるため、可能性がある場合は最初から保険適用に対応している医療機関を選ぶのも一つの手です。
子ども医療費助成制度が使えるケース
各自治体の「子ども医療費助成制度」は、保険診療の自己負担分を自治体が肩代わりする仕組みです。札幌市では高校生世代まで、入院・通院ともに保険診療の自己負担額が助成対象になります。
ここで誤解されやすいのが、この制度は「保険診療の自己負担分」のみが対象で、自由診療の矯正治療費は対象外という点です。一般的なワイヤー矯正・マウスピース矯正など自費治療の費用は助成されません。
保険適用の対象となるお子様の場合は、保険診療の自己負担3割分にさらに自治体助成が重なるため、実質的な自己負担はかなり小さくなります。
医療費控除で費用負担を抑える方法
保険適用にならない自由診療の矯正でも、医療費控除を使えば確定申告で所得税・住民税の一部が戻ってくるケースがあります。年間の支払額によっては数万円〜十数万円が還付されるため、見落とさずに準備しておきたい制度です。
控除の対象になる費用とならない費用
子供の歯列矯正は、発育段階にあるお子様の成長を阻害しないために必要と歯科医師が診断した場合、医療費控除の対象になります。容姿を美しくする目的のみの矯正は対象外です。
| 区分 | 対象になる費用 | 対象にならない費用 |
|---|---|---|
| 治療費 | 矯正装置代、調整料、保定装置料、検査料、診断料 | 美容目的のみの矯正費用 |
| 通院費 | 公共交通機関での通院費、付き添いが必要な年齢の保護者の交通費 | タクシー代、自家用車のガソリン代・駐車場代 |
| その他 | レントゲン撮影費、口腔衛生指導料 | デンタルローンの利息(元本部分は対象) |
通院費は見落とされやすい項目です。月1回でも数年分を合計すると数万円規模になるため、領収書のない公共交通機関の利用は通院日と経路をメモしておきましょう。
デンタルローンを利用した場合、信販会社が立替払いをした年(契約成立年)にローン総額(利息を除く)をまとめて医療費控除に計上できます。分割で返済中であっても、申告するのは契約成立日の年分に一括です。返済期間中の毎年に分けて申告するわけではない点に注意してください。
医療費控除の計算方法と還付金の目安
医療費控除額と還付金は、次の式で計算します。
- 医療費控除額= 1年間の医療費合計− 保険金などで補填された金額− 10万円(または総所得金額等の5%のいずれか低い方)
- 還付金(所得税分)=医療費控除額× 所得税率
具体例で見てみます。所得税率は課税所得金額で決まる累進税率です。下の例は「課税所得330万円超〜695万円以下=所得税率20%」「課税所得195万円超〜330万円以下=所得税率10%」を想定しています(住民税率は一律10%)。
| 項目 | ケースA | ケースB |
|---|---|---|
| 年間の矯正関連費用 | 50万円 | 30万円 |
| 保険補填 | 0円 | 0円 |
| 医療費控除額 | 40万円 | 20万円 |
| 想定する所得税率 | 20% | 10% |
| 所得税の還付目安 | 約8万円 | 約2万円 |
| 住民税の軽減目安 | 約4万円 | 約2万円 |
| 合計の負担減 | 約12万円 | 約4万円 |
矯正治療は治療費の支払いが複数年にまたがるため、支払いを1年にまとめるか分散させるかで控除額が変わります。たとえば装置代の大きな支払いを12月にするか翌年1月にするかで、控除を受けられる年が変わります。デンタルローンを使う場合は契約成立年に総額が計上されるため、ローン契約の年に他の医療費を集めることも検討しましょう。
お子様の矯正費用に加えて、生計を一にするご家族の医療費(通院・薬代など)も合算して申告できます。共働きのご家庭では、所得税率が高い方が申告するほうが還付額は大きくなります。
申請に必要な書類と手続きの流れ
医療費控除の申請は確定申告で行います。会社員の方も、年末調整とは別にご自身で申告する必要がある点にご注意ください。必要な書類は次の4点です。
- 医療費控除の明細書(国税庁のWebサイトからダウンロード可能)
- 源泉徴収票(給与所得の方)
- 確定申告書
- マイナンバーカードまたは通知カード+本人確認書類
領収書の提出は不要ですが、税務署から提示を求められることがあるため領収書は5年間の保管が必要です。矯正治療は数年にわたるため、専用のファイルを1つ作り、領収書・通院交通費のメモ・デンタルローン契約書のコピーをまとめておくと、申告のたびに探し回らずに済みます。
e-Taxを利用すれば自宅からオンラインで申告でき、還付金は一般的に1ヶ月〜1ヶ月半程度で指定口座に振り込まれます。
子供の矯正費用の相場と費用を左右する要因
「制度を加味したうえで、結局いくらかかるのか」をイメージしておくと、相談前の準備として役立ちます。自由診療のため明確な相場はありませんが、治療段階と費用差の要因を知っておくと、各院の料金表が読み解きやすくなります。
一期治療と二期治療の費用の違い
子供の矯正は乳歯と永久歯が混在する時期に行う「一期治療」と、永久歯が生え揃ってから行う「二期治療」の2段階で考えるのが一般的です。
両者の区分は医学的に厳密に定義されたものではなく、クリニックによって扱いが異なります。一期+二期をセット料金で設定する院もあれば、一期で終了か二期へ進むかを成長を見ながら判断する院もあります。
費用に差が出る3つの要因
同じ「子供の矯正」でも費用に幅が出るのは、主に次の3つの要因によります。
なお、当院ではセラミックブラケット・ホワイトワイヤーによる目立ちづらい矯正治療も追加費用なしで対応しています。
長い治療期間だからこそ、最初の相談で確認しておきたいこと
矯正治療は短くても1〜2年、長ければ5年以上の長期治療です。最初の相談で確認しておくべきことを整理しておくと、後から「こんなはずではなかった」と感じる場面を減らせます。
初回相談で確認すべき4つのポイント
ここまでお話ししてきた費用の見方を初回相談に持ち込めるよう、次の4点を担当医に確認しておくと安心です。
| 確認ポイント | 何を聞くか |
|---|---|
| 料金体系 | 総額制か都度払い制か、調整料・保定装置代をどこまで含むか |
| 治療段階の見通し | 一期治療だけで済むか、二期治療まで必要か、それぞれの費用目安 |
| 支払い方法 | 院内分割・デンタルローン・クレジットカードの対応状況 |
| 医療費控除・保険適用 | 自分のケースが対象になるか、診断書が必要か |
費用面で後悔しないための準備
初回相談の前にご家庭で次の3点を整理しておくと、より具体的な話ができます。
まず、お子様のお口の状態で気になっていることを書き出してください。「前歯が出ている」「噛み合わせが反対になっている」「下の歯が前に出ている」など、気づいたことをメモにしておくだけで十分です。これがあると、担当医が治療の方向性と費用の概算を伝えやすくなります。
次に、家計として矯正にかけられる年間の予算をおおまかに決めておくと、支払い方法の相談がしやすくなります。子供の矯正治療は、緊急の処置が必要なケースを除けば開始時期に多少の余裕があるため、「今年は難しいが来年度なら始められそう」という判断もできます。
最後に、複数の医院で相談(セカンドオピニオン)することを選択肢に入れておいてください。矯正の方針は医師ごとに違いが出やすく、複数の医院で意見を聞くこと自体は失礼にあたりません。料金体系・治療方針・通院頻度を比較した上で納得できる医院を選ぶことが、数年間の治療を安心して続けるための第一歩になります。
まとめ
子供の歯科矯正に直接的な「補助金」はありませんが、保険適用・自立支援医療・医療費控除の3つの公的制度を組み合わせれば、ご家庭の負担を抑えられる場合があります。お子様の症状によって使える制度は変わるため、まずは保険適用や自立支援医療の対象になり得るかを診断で確認することが第一歩です。
費用の見通し・通院頻度・追加費用の発生条件まで含めて最初の相談で確認しておくと、長い治療期間を安心して進められます。
矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前では、顎変形症の保険適用矯正、先天性疾患による歯列異常の矯正、自由診療での小児矯正・成人矯正までを院長が一貫して担当しています。お子様の症状がどの制度の対象になり得るかを含めて、まずは一度ご相談ください。
記事監修者

矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前
院長 三木善樹
大学病院で培った治療と予防の経験を地域の皆様にお届けしていきたいと考えております。矯正治療は長い時間をかけて歯並びを整える治療です。治療期間を通じて信頼できるパートナーとして寄り添えるよう、スタッフ一同努めてまいります。
- 経歴
- 1993年:徳島大学歯学部 卒業
- 1997年:徳島大学大学院歯学研究科 修了
- 1997年:徳島大学歯学部 矯正学講座 助手
- 2004年:札幌医科大学医学部 口腔外科学講座 助手
- 2007年:札幌医科大学医学部 口腔外科学講座 助教
- 2022年:矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前 院長
- 所属学会
- 日本矯正歯科学会 認定医
- 日本口腔外科学会
- 日本顎変形症学会
- 日本口蓋裂学会
- 日本顎関節学会
- 北海道矯正歯科学会
- 日本骨代謝学会
- 歯科臨床研修医指導医
【小児矯正に関する重要事項】
小児矯正(自由診療)は公的医療保険が適用されない自由診療です。なお、顎変形症と診断される症例の外科矯正は保険適用となります。
- 治療内容:お子様の歯並びや顎の成長段階に合わせた装置(拡大装置・機能的矯正装置・固定式矯正装置等)を用いた矯正治療
- 治療期間・回数:混合歯列期からの一期治療は1〜3年程度、永久歯がそろってからの二期治療を含めると数年単位の通院が必要(個人差あり)
- 費用の目安:治療費 500,000円(税込)に施術管理料・セラミックブラケット・保定装置料を包括。検査料 70,000円・診断料 30,000円・調整料毎月6,000円(税込)が別途。追加装置を使用する場合はリンガルアーチ 35,000円・拡大装置 45,000円(税込)等の費用がかかる場合があります。クリニックによって異なります。
- リスク・副作用:歯の動きには個人差があり計画通りに進まないことがある、装置による違和感・痛み・口内炎、装置の脱離や破損、虫歯・歯肉炎のリスクが上がる、抜歯を伴う場合は抜歯部位の痛みや腫れ、後戻り、まれに歯根吸収が生じることがある
-
-
住所〒060-0003
北海道札幌市中央区北3条西14丁目2-2
ダイアパレス北3条第2 1F -
アクセス地下鉄東西線「西11丁目」・「西18丁目」駅から徒歩10分
JR函館線「桑園」駅から徒歩15分 -
駐車場駐車場はクリニックの裏、マンション敷地内15番ですが、使用中の場合は近隣駐車場に停めてください。受付で駐車券を提示し申告していただけましたら1時間無料チケットをお渡しします。
-
-
予約について
診療時間 月 火 水 木 金 土 日 10:00 ~ 13:00 - - ● ● ● ● ▲ 14:00 ~ 18:00 - ● - - ● ● ▲ 休診日/月曜日・火曜日午前・水曜日午後・木曜日午後・隔週日曜日・祝日
※1 日曜日は隔週
※ 最終受付は17時30分
マイナンバーカードでの受付OK
各種キャッシュレス決済OK診療科目:矯正歯科