子供の口呼吸を矯正で改善する方法:原因の見極めから治療の流れまで
子供の口呼吸は、単なる癖ではなく、顎の骨格や口周りの筋力が関わる構造的な問題であることが少なくありません。原因が鼻の疾患なのか、顎の発育不足なのか、筋力の問題なのかによって、改善に必要なアプローチはまったく異なります。
口呼吸の原因を正しく見極めることで、お子様の成長に合った矯正治療や家庭での取り組みを選べるようになります。
子供の口呼吸はなぜ「癖」だけでは片付けられないのか
口呼吸をしているお子様に「口を閉じて」と声をかけても改善しない場合、口を閉じられない構造的な理由が背景にあることがあります。原因を見極めずに習慣の問題として扱うと、改善の糸口を逃してしまいます。
口呼吸が起きる3つの原因
口呼吸の原因は、大きく3つに整理できます。
1つ目は鼻の通りの問題です。アレルギー性鼻炎やアデノイド(鼻の奥にあるリンパ組織)の肥大があると、鼻から十分に空気を取り込めず、口で呼吸するしかなくなります。アデノイドは幼児期に大きくなりやすく、鼻の奥の気道を物理的にふさいでしまうことがあります。
2つ目は口周りの筋力不足です。唇を閉じる力(口輪筋)や、舌を上顎に押しつける力が弱いと、口が自然に開いた状態になりやすくなります。やわらかい食事が中心で噛む回数が少ない場合、こうした筋肉が育ちにくい傾向があります。
3つ目は歯並びや顎の形態です。上顎が狭い、前歯が前に出ていて唇が閉じにくいといった骨格的な条件は、口呼吸を助長します。この場合は意識づけだけで鼻呼吸に切り替えることが難しく、顎の形態そのものへのアプローチが必要になります。
「口が開いている」以外のサイン
口呼吸をしているかどうかは、口が開いているかだけでは判断しにくいことがあります。次のような兆候が複数当てはまるときは、口呼吸が習慣化している可能性があります。
- テレビを見ているときや寝ているときに口がぽかんと開いている
- いびきをかく、寝ている間に口が乾いている
- 上唇だけが乾燥して白っぽくなる
- 食事中にくちゃくちゃと音を立てて食べる
- 朝起きたときに口臭がある
こういったサインは、歯科や耳鼻咽喉科への相談を検討する目安になります。
口呼吸が子供の顎と歯並びに与える影響
口呼吸が続くと、歯並びが悪くなるという話を耳にした方は多いかもしれません。ここでは「なぜ口呼吸で歯並びが崩れるのか」、そのメカニズムを説明します。
舌の位置が上顎の成長を左右する
鼻呼吸をしているとき、舌は上顎の天井(口蓋)に軽く触れた位置に収まっています。この舌の圧力が、上顎の骨を横方向に広げる力として働いています。
口呼吸が習慣になると舌の位置が下がり(低位舌と呼びます)、上顎に対する内側からの圧力が抜けてしまいます。一方で頬の筋肉が外側から歯列を押す力は変わらないため、上顎の幅が広がらず狭くなりやすくなります。上顎が狭いままだと永久歯が並ぶスペースが不足し、叢生(がたがたの歯並び)や前歯が前に出る歯並び、前歯が噛み合わない開咬といった不正咬合につながることがあります。
顎の発育不足が呼吸をさらに悪化させる
上顎の骨は、鼻腔の底(鼻の中の床部分)を形成しています。そのため上顎が十分に発育しないと鼻腔自体も狭くなり、鼻で呼吸しづらい状態が続きます。
鼻の通りが悪いから口呼吸が定着し、口呼吸が続くから顎の発育が遅れる、という悪循環に入るケースは少なくありません。この悪循環が続いている間にも、お子様の顎の骨は日々成長を続けています。永久歯が生えそろう頃にスペース不足が顕在化してから慌てるよりも、早い段階で原因を見極めるほうが、治療の選択肢を広く持てます。
歯並び以外への影響
口呼吸の影響は歯並びだけにとどまりません。口が常に開いていると口腔内が乾燥し、唾液の自浄作用が低下します。その結果、虫歯や歯肉炎のリスクが高まります。
加えて、鼻を通さず口から直接空気を吸い込むため、ウイルスや細菌、アレルゲンを体内に取り込みやすくなります。風邪をひきやすい、アレルギー症状が出やすいといった訴えは、口呼吸と無関係ではありません。
歯科医師が口呼吸を診るときの視点
口呼吸を歯科で診るときは、歯並びの形だけを見るのではなく、呼吸と筋肉と骨格を一緒に診ていきます。原因がどこにあるのかを切り分けることで、必要な治療と、必要のない治療がはっきりします。
検査で確認するポイント
矯正歯科の検査では、レントゲン撮影で上顎の幅や奥行き、気道の広さ、アデノイドや扁桃の大きさを確認します。口腔内の診査では、歯列の形だけでなく舌の位置(安静時に上顎についているか、下に落ちているか)や、飲み込むときの舌の動きも観察します。
口呼吸の原因が鼻の疾患にある場合、矯正治療だけでは解決できないこともあります。アデノイドや扁桃の肥大が著しい場合は耳鼻咽喉科と連携し、まず気道の問題を改善してから矯正治療に進む流れを取ることもあります。
検査の段階で、矯正治療が必要か、耳鼻咽喉科の受診が先か、しばらく経過観察でよいかの見当がつきます。まず検査を受けること自体に意味があるのは、こうした切り分けのためです。
「歯並びの問題」と「呼吸の問題」を分けて考える
口呼吸の原因が「鼻の問題」なのか「顎の問題」なのか、あるいは両方なのかによって、進む道筋が変わります。鼻の通りが原因なら耳鼻咽喉科の治療が先になりますし、上顎の幅の狭さが原因なら矯正での介入が有効です。両方が絡んでいるときは、両科で並行して進めることもあります。
「歯並びがガタガタ」と「呼吸がしづらい」は別の問題に見えて、根っこでつながっていることが多い領域です。検査データに基づいて切り分けることで、お子様に合った治療の道筋が見えてきます。
口呼吸の改善に使われる矯正治療の方法
矯正治療で口呼吸そのものを直接治すわけではありません。口呼吸の背景にある顎の形態や筋肉の使い方に働きかけ、鼻呼吸ができる環境を整えるのが矯正の役割です。家庭での取り組みと組み合わせて進めていきます。
上顎を広げる装置による治療
上顎が狭い場合は、上顎の幅を広げる装置を使った治療を行います。
上顎の骨は左右の骨が正中口蓋縫合という継ぎ目でつながっており、成長期のうちはこの縫合部を利用して骨ごと広げることが可能です。装置を上顎に固定し、ネジを段階的に回して骨を左右に広げていきます。
上顎が広がると鼻腔の底も同時に広がるため、鼻の通りが改善して鼻呼吸がしやすくなる効果が期待できます。「歯並びを整える治療」と「呼吸の環境を整える治療」が同時に進むのが、この時期の矯正の大きな利点です。
MFT(口腔筋機能療法)で筋力と習慣を整える
MFT(Myofunctional Therapy/口腔筋機能療法)は、舌・唇・頬の使い方を整えるトレーニングです。装置で骨格や歯並びにアプローチしても、舌や口周りの筋肉が口呼吸時の癖のままだと、装置を外したあとに後戻りしやすくなります。
トレーニングの内容は段階的に進みます。
- 舌を上顎の正しい位置に置く練習
- 正しい飲み込み方の習得
- 口唇を閉じる力を鍛える練習
軽度の不正咬合であればMFTだけで改善が見られることもあり、矯正装置と併用すると治療後の安定性が高まります。トレーニングの期間は一般的に1〜2年程度で、自宅での練習を毎日続けることが改善の鍵になります。
家庭でできる取り組み
矯正治療と並行して、家庭でも口呼吸の改善を後押しする取り組みがあります。
「あいうべ体操」は、口呼吸問題の第一人者である今井先生が考案した方法で、口を大きく動かして口周りの筋肉を鍛えるトレーニングです。「あ・い・う・べ」と口を大きく動かす動作を1日30回程度続けることで、口唇を閉じる力や舌の筋力を鍛えることが期待できます。
食事面では、噛みごたえのある食材を取り入れて咀嚼回数を増やすことも有効です。噛む動作は顎の発育を促し、口周りの筋力を育てることにつながります。
就寝時に口が開いてしまうお子様には、口閉じテープ(市販のサージカルテープでも代用可能)を試してみる方法もあります。ただし鼻づまりがひどい場合は無理に口をふさぐと危険ですので、鼻の通りに問題がないことを確認した上で使うようにしてください。
参考:あいうべ体操 – 福岡のみらいクリニック
矯正治療を始めるタイミングと期間の目安
「いつ始めるべきか」「どのくらいかかるか」「いくらかかるか」は、相談前に保護者の方が最も気になるところだと思います。それぞれの判断材料を整理します。
いつ相談するのがよいか
口呼吸が気になり始めた時点で、早めに相談することをおすすめします。矯正治療を実際に始めた年齢でもっとも多いのは7〜8歳で、上下の前歯が生えかわる時期にあたります。前歯の様子から、将来の歯並びがある程度予測できるためです。
必ずしもすぐに治療を開始するわけではありません。検査の結果、経過観察が適切と判断されるケースもあります。早めに相談しておくメリットは、治療が必要になった場合に顎の成長を利用できる時期を逃さないことにあります。
乳歯が生えそろった3歳頃に口呼吸の兆候がある場合は、小児歯科や耳鼻咽喉科で一度相談しておくと安心です。
治療期間はどのくらいかかるか
お子様の症状や顎の発育状態によって異なりますが、一期治療(骨格へのアプローチが中心)は、一般的に1〜3年程度が目安です。上顎の拡大装置を使う場合、装置の装着期間は数ヶ月〜1年程度ですが、その後も保定期間として経過を観察します。
MFTを併用する場合は、トレーニングの習得に1〜2年程度を見込む必要があります。装置治療が終了した後もMFTを続けることで、正しい呼吸と舌の位置を定着させます。
口呼吸の改善は装置を外したら終わりではなく、筋肉の使い方や呼吸の習慣が安定するまで経過を見ていくことが治療の一部です。
費用の考え方
小児矯正の費用は、一期治療の場合で一般的に30万〜50万円程度が目安です。費用に差が出る主な要因は、使用する装置の種類、治療の範囲(上顎の拡大のみか、歯並びの改善まで含むか)、通院回数です。
矯正治療は原則として自由診療ですが、医療費控除の対象になります。年間の医療費が10万円を超える場合、確定申告で税金の還付を受けられる可能性がありますので、領収書を保管しておくことをおすすめします。
カウンセリングの際に、治療費に含まれる内容(検査料・調整料・保定装置料など)を確認しておくと、総額の見通しが立てやすくなります。
まとめ
子供の口呼吸は、意識だけでは改善しにくい構造的な問題を含んでいることが少なくありません。記事の要点を整理します。
- 口呼吸の原因は、鼻の通り・口周りの筋力・顎の骨格の3つに分けて考える
- 口呼吸が続くと上顎の発育が妨げられ、歯並び・顔立ち・全身の健康に影響が及ぶ
- 矯正では上顎の拡大やMFTにより、呼吸の環境そのものを整える
- 上下の前歯が生えかわる7〜8歳頃が相談時期の目安。気になる兆候があれば、その時点で一度相談する
矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前では、相談料無料で初回のカウンセリングを承っています。お子様の口呼吸について気になることがあれば、まずは一度ご相談ください。大学病院での経験を踏まえ、ご家庭ごとの状況に合わせた適切な治療法を考えていきます。
記事監修者

矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前
院長 三木善樹
大学病院で培った治療と予防の経験を地域の皆様にお届けしていきたいと考えております。矯正治療は長い時間をかけて歯並びを整える治療です。治療期間を通じて信頼できるパートナーとして寄り添えるよう、スタッフ一同努めてまいります。
- 経歴
- 1993年:徳島大学歯学部 卒業
- 1997年:徳島大学大学院歯学研究科 修了
- 1997年:徳島大学歯学部 矯正学講座 助手
- 2004年:札幌医科大学医学部 口腔外科学講座 助手
- 2007年:札幌医科大学医学部 口腔外科学講座 助教
- 2022年:矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前 院長
- 所属学会
- 日本矯正歯科学会 認定医
- 日本口腔外科学会
- 日本顎変形症学会
- 日本口蓋裂学会
- 日本顎関節学会
- 北海道矯正歯科学会
- 日本骨代謝学会
- 歯科臨床研修医指導医
【小児矯正に関する重要事項】
小児矯正(自由診療)は公的医療保険が適用されない自由診療です。なお、顎変形症と診断される症例の外科矯正は保険適用となります。
- 治療内容:お子様の歯並びや顎の成長段階に合わせた装置(拡大装置・機能的矯正装置・固定式矯正装置等)を用いた矯正治療
- 治療期間・回数:混合歯列期からの一期治療は1〜3年程度、永久歯がそろってからの二期治療を含めると数年単位の通院が必要(個人差あり)
- 費用の目安:治療費 500,000円(税込)に施術管理料・セラミックブラケット・保定装置料を包括。検査料 70,000円・診断料 30,000円・調整料毎月6,000円(税込)が別途。追加装置を使用する場合はリンガルアーチ 35,000円・拡大装置 45,000円(税込)等の費用がかかる場合があります。クリニックによって異なります。
- リスク・副作用:歯の動きには個人差があり計画通りに進まないことがある、装置による違和感・痛み・口内炎、装置の脱離や破損、虫歯・歯肉炎のリスクが上がる、抜歯を伴う場合は抜歯部位の痛みや腫れ、後戻り、まれに歯根吸収が生じることがある
-
-
住所〒060-0003
北海道札幌市中央区北3条西14丁目2-2
ダイアパレス北3条第2 1F -
アクセス地下鉄東西線「西11丁目」・「西18丁目」駅から徒歩10分
JR函館線「桑園」駅から徒歩15分 -
駐車場駐車場はクリニックの裏、マンション敷地内15番ですが、使用中の場合は近隣駐車場に停めてください。受付で駐車券を提示し申告していただけましたら1時間無料チケットをお渡しします。
-
-
予約について
診療時間 月 火 水 木 金 土 日 10:00 ~ 13:00 - - ● ● ● ● ▲ 14:00 ~ 18:00 - ● - - ● ● ▲ 休診日/月曜日・火曜日午前・水曜日午後・木曜日午後・隔週日曜日・祝日
※1 日曜日は隔週
※ 最終受付は17時30分
マイナンバーカードでの受付OK
各種キャッシュレス決済OK診療科目:矯正歯科