子供の八重歯矯正はいつ始める?原因・治療法・費用を歯科医師が解説
八重歯はかわいらしい印象で語られることもありますが、歯科医療の視点では「犬歯が並ぶスペースが足りずに外側へ押し出された状態」であり、虫歯や噛み合わせのリスクを抱えやすい歯並びです。犬歯が八重歯になるかどうかは、犬歯が生えてくる小学校5年生前後より前の段階で、ある程度の流れが決まります。
この記事では、八重歯が起きる仕組みと、お子様のうちに矯正で対応するメリット、そして始めるタイミングの見極め方をお伝えします。
お子様の八重歯はなぜ起きるのか
八重歯は「歯が悪い向きに生えた」というより、「並ぶ場所が足りずに行き場を失った犬歯が、最後に外側へ押し出された結果」と捉えるとわかりやすいでしょう。原因は犬歯そのものではなく、顎のスペース不足にあります。
犬歯が八重歯になりやすい理由
永久歯は前歯から順に生え変わっていきます。前歯(中切歯・側切歯)が生えそろい、第一小臼歯・第二小臼歯と続いたあと、犬歯は永久歯の中で最後のほうに生えてくる歯です。上顎の犬歯は小学校5年生前後(10〜11歳ごろ)に生えてくることが多く、このとき前後の歯がすでに並びを完成させていると、犬歯が入るスペースが残っていません。
行き場を失った犬歯は、骨の中で本来生えるべき位置から外側にずれて萌出します。この外側に飛び出した犬歯が、いわゆる「八重歯」です。犬歯は歯根が長く、顎の骨の深い位置から萌出してくるため、スペースが足りないときに「外側に逃げる」傾向が他の歯より強いという特徴があります。
スペース不足が起きる3つの背景
犬歯が八重歯になるかどうかは、生え変わりの時点で顎にどれだけスペースがあるかで決まります。スペースが不足する背景は主に3つあります。
- 遺伝的に顎が小さい、または歯が大きい
- 幼少期から柔らかい食べ物が中心で、咀嚼による顎の発育が不足している
- 乳歯を虫歯や外傷で早くに失い、隣の歯が寄ってきてスペースが狭くなった
とくに3つ目は見落とされやすい原因です。乳歯を早期に失うと、空いた隙間に向かって隣の歯が移動し、あとから生えてくる永久歯の居場所が削られます。「どうせ抜けるから」と乳歯の虫歯を放置することは、将来の歯並びに影響する場合があります。
八重歯を放置するとどうなるのか
八重歯を放置すると将来的に複数のリスクが重なってきます。見た目だけの問題ではない理由を、3つの観点からお伝えします。
虫歯・歯周病のリスクが高まる
八重歯の部分は歯が重なり合っているため、歯ブラシの毛先が届きにくくなります。犬歯が歯列から飛び出している場合、その裏側や隣の歯との間に磨き残しがたまりやすく、虫歯や歯肉炎が起きやすい部位になります。
お子様自身が丁寧に磨こうとしても、物理的にブラシが入らない部分は清掃のしようがありません。仕上げ磨きをしている保護者の方でも、重なった部分の汚れを完全に取り除くのは難しくなります。
噛み合わせへの影響
犬歯は本来、食べ物を引き裂く役割と、歯を横にずらしたときに奥歯を保護する「犬歯誘導」という役割を持っています。八重歯になると犬歯が正しい位置で噛み合わないため、奥歯に過度な負担がかかりやすくなります。
子供のうちはすぐに自覚症状として現れないこともありますが、長期的には奥歯のすり減りや顎関節への影響につながる可能性があります。
成人矯正で抜歯が必要になる可能性
子供のうちに対応せず、永久歯がすべて生えそろった状態で矯正治療を始める場合、スペース不足が大きいと小臼歯(犬歯の隣の歯)を抜歯してスペースを作る方針になることがあります。
子供の矯正は顎の成長を利用してスペースを広げられますが、成長期を過ぎた成人では顎の骨を広げる治療が難しくなります。「歯を並べるスペースを骨ごと広げる」のではなく「歯の数を減らしてスペースを作る」という発想に切り替わるためです。健康な歯を残せるかどうかという観点で、子供のうちに対応するか・大人になってから対応するかは大きな差が出ます。
小児矯正で八重歯を治す方法
子供の矯正は、大人の矯正と発想が違います。大人は「歯を動かす」ことが中心ですが、子供は「顎の成長を導く」ことが中心になります。八重歯への小児矯正は、一般的に2つの段階に分けて進めます。
一期治療:顎の成長を利用してスペースをつくる
一期治療は乳歯と永久歯が混在している混合歯列期(おおむね6〜11歳頃)に行います。顎の骨がまだ成長段階にあるこの時期に、歯が並ぶためのスペースを広げることが目的です。
八重歯の原因がスペース不足である場合、一期治療で顎の幅を広げたり、歯列のアーチを整えたりすることで、犬歯が正しい位置に生えてくるための場所を確保します。
一期治療で十分なスペースが確保できると、犬歯が自然に正しい位置に並び、二期治療が不要になることもあります。
一期治療で使用される装置は、お子様の歯並びの状態や年齢に応じて選択します。当院で扱う代表的な装置と特徴は次のとおりです。
| 装置 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 急速拡大装置 | 上顎の骨の継ぎ目(正中口蓋縫合)を広げる固定式の装置。短期間で顎の幅を拡大できる | 上顎の幅が狭く、スペース不足が大きい場合 |
| 拡大床(床矯正装置) | 取り外し可能で、ネジを少しずつ回して歯列を広げる | スペース不足が軽度〜中程度の場合 |
| ヘッドギア・リンガルアーチなど補助装置 | 上顎の前方成長の抑制や、奥歯の位置を保つために使用 | 出っ歯傾向や乳歯早期喪失への対応 |
どの装置を選ぶかは、顎の骨の状態・スペース不足の程度・お子様の年齢によって変わります。
二期治療:永久歯の位置を整える
二期治療は永久歯がおおむね生えそろった12歳頃以降に行う治療で、成人の矯正と同じ方法で歯の位置を細かく調整します。当院では、見た目に配慮したセラミックブラケットとホワイトワイヤーを用いた表側矯正を中心に対応しています。
| 装置 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| セラミックブラケット+ホワイトワイヤー | 歯の色になじむ白〜半透明の装置。金属より目立ちにくい | 見た目を気にする中高生のお子様 |
| 金属ブラケット+メタルワイヤー | 強度が高く、複雑な歯の動きにも対応しやすい | 歯の移動量が大きい場合や難症例 |
一期治療でスペースを十分に確保できていた場合、二期治療は微調整で済むことが多く、治療期間が短くなる傾向があります。一方、一期治療を行わなかった場合は、二期治療で歯の大きな移動が必要になり、抜歯を伴うケースも増えます。
矯正を始めるタイミングの見極め方
八重歯への小児矯正は、犬歯がすでに八重歯として萌出してしまってからより、生えてくる前に対応するほうが選択肢が広がります。
保護者が気づける3つのサイン
矯正の必要性を見極めるうえで、保護者の方が日常の中で気づける手がかりがあります。専門的な診断は歯科医師に任せるとしても、以下のサインがある段階で一度相談していただくと、ベストなタイミングを逃さずに済みます。
- 永久歯の前歯が重なって生えてきた
- 乳歯が抜けてもなかなか永久歯が生えてこない
- 乳歯を虫歯や外傷で早くに失った
前歯の段階でスペースが足りていない場合、あとから生えてくる犬歯はさらに並ぶ場所がなくなる可能性があります。永久歯がなかなか生えてこない場合や、乳歯を早期に失っている場合も、永久歯の並ぶスペースが不足しているサインです。
「八重歯になる前」に相談するメリット
上顎の犬歯は小学5〜6年生頃に生えてきます。犬歯が八重歯として生えてきてから相談するのでは、一期治療の効果を十分に活かせない場合があります。
理想的には、犬歯が生えてくる前の8〜9歳頃に矯正歯科で精密検査を受けることで、一期治療で顎のスペースを確保する時間的な余裕が生まれます。犬歯がすでに八重歯として生えてしまった後でも治療は可能ですが、選択肢の幅は早期に相談した場合のほうが広くなります。
費用の目安と治療期間
矯正治療は時間とお金のかかる治療です。治療を始める前に、費用の全体像とご家庭で活用できる制度を整理しておきましょう。
小児矯正の費用相場
小児矯正にかかる費用は、一期治療と二期治療でそれぞれ異なります。
費用や期間に幅がある理由は、お子様の歯並びの状態(スペース不足の程度、上下顎のバランス)・使用する装置の種類・医院の料金体系によって変わるためです。
カウンセリングの際に「一期治療から始めた場合のトータル費用」「二期治療への移行時の差額計算の有無」を確認しておくと、長期の見通しが立てやすくなります。
なお、矯正歯科治療は原則として公的医療保険の適用外(自由診療)です。ただし、口唇口蓋裂や厚生労働大臣が定める特定の疾患に起因する咬合異常、6歯以上の永久歯萌出不全に伴う咬合異常など、限られた条件に該当する場合は保険適用となります。
医療費控除で費用負担を軽減する
子供の歯列矯正は、発育段階での咬合異常を改善する目的であれば医療費控除の対象になります。美容目的の矯正は対象外ですが、八重歯による咀嚼機能や顎の発達への影響を改善する小児矯正は、医療上の必要性が認められやすい治療です。
医療費控除は、1年間(1月〜12月)に支払った医療費が10万円を超えた場合(総所得金額200万円未満の方は総所得金額の5%を超えた場合)に、超えた分が所得から控除される仕組みです。矯正治療は1年で数十万円かかることが多く、医療費控除の効果が大きく出やすい治療と言えます。
申請のために、領収書は必ず保管しましょう。確定申告時には支払った医療費の明細書を作成して提出します。お子様の矯正と同じ年にご家族が他の医療費を支払っていれば、合算して申告できます。
まとめ
八重歯は犬歯のスペース不足から起きる歯並びで、見た目だけでなく、虫歯・歯周病・噛み合わせの将来的なリスクを抱えやすい状態です。「いつ相談すべきか」で迷われたら、6〜7歳ごろの第一大臼歯が生え始めた時期に一度ご相談いただくのが、判断の選択肢を広く保つ意味で有効です。
矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前では、大学病院で約30年にわたり矯正治療と顎変形症の治療に携わってきた経験を踏まえ、お子様一人ひとりの成長段階に合わせた治療計画をご提案しています。八重歯やお子様の歯並びが気になる方は、お気軽にご相談ください。
記事監修者

矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前
院長 三木善樹
大学病院で培った治療と予防の経験を地域の皆様にお届けしていきたいと考えております。矯正治療は長い時間をかけて歯並びを整える治療です。治療期間を通じて信頼できるパートナーとして寄り添えるよう、スタッフ一同努めてまいります。
- 経歴
- 1993年:徳島大学歯学部 卒業
- 1997年:徳島大学大学院歯学研究科 修了
- 1997年:徳島大学歯学部 矯正学講座 助手
- 2004年:札幌医科大学医学部 口腔外科学講座 助手
- 2007年:札幌医科大学医学部 口腔外科学講座 助教
- 2022年:矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前 院長
- 所属学会
- 日本矯正歯科学会 認定医
- 日本口腔外科学会
- 日本顎変形症学会
- 日本口蓋裂学会
- 日本顎関節学会
- 北海道矯正歯科学会
- 日本骨代謝学会
- 歯科臨床研修医指導医
【小児矯正に関する重要事項】
小児矯正(自由診療)は公的医療保険が適用されない自由診療です。なお、顎変形症と診断される症例の外科矯正は保険適用となります。
- 治療内容:お子様の歯並びや顎の成長段階に合わせた装置(拡大装置・機能的矯正装置・固定式矯正装置等)を用いた矯正治療
- 治療期間・回数:混合歯列期からの一期治療は1〜3年程度、永久歯がそろってからの二期治療を含めると数年単位の通院が必要(個人差あり)
- 費用の目安:治療費 500,000円(税込)に施術管理料・セラミックブラケット・保定装置料を包括。検査料 70,000円・診断料 30,000円・調整料毎月6,000円(税込)が別途。追加装置を使用する場合はリンガルアーチ 35,000円・拡大装置 45,000円(税込)等の費用がかかる場合があります。クリニックによって異なります。
- リスク・副作用:歯の動きには個人差があり計画通りに進まないことがある、装置による違和感・痛み・口内炎、装置の脱離や破損、虫歯・歯肉炎のリスクが上がる、抜歯を伴う場合は抜歯部位の痛みや腫れ、後戻り、まれに歯根吸収が生じることがある
-
-
住所〒060-0003
北海道札幌市中央区北3条西14丁目2-2
ダイアパレス北3条第2 1F -
アクセス地下鉄東西線「西11丁目」・「西18丁目」駅から徒歩10分
JR函館線「桑園」駅から徒歩15分 -
駐車場駐車場はクリニックの裏、マンション敷地内15番ですが、使用中の場合は近隣駐車場に停めてください。受付で駐車券を提示し申告していただけましたら1時間無料チケットをお渡しします。
-
-
予約について
診療時間 月 火 水 木 金 土 日 10:00 ~ 13:00 - - ● ● ● ● ▲ 14:00 ~ 18:00 - ● - - ● ● ▲ 休診日/月曜日・火曜日午前・水曜日午後・木曜日午後・隔週日曜日・祝日
※1 日曜日は隔週
※ 最終受付は17時30分
マイナンバーカードでの受付OK
各種キャッシュレス決済OK診療科目:矯正歯科