子供の開咬(オープンバイト)矯正は成長期がカギ:原因と治療の進め方
子供の開咬は、指しゃぶり・舌癖・口呼吸といった日常の癖と深く関わる噛み合わせです。お子様の癖や成長の方向が関わって生じることが多く、成長期に治療を始められるかどうかで、将来必要になる治療の負担が変わってくるのが特徴です。
この記事では、開咬の見分け方から原因、治療の進め方までを順にお伝えします。
子供の開咬(オープンバイト)とは:前歯が閉じない噛み合わせ
開咬(かいこう)は、奥歯を噛み合わせたときに上下の前歯のあいだにすき間が残る状態を指します。「オープンバイト」と呼ばれることもあり、見た目だけの問題ではなく、食事や発音、口呼吸など日常の機能に関わる噛み合わせの問題です。
開咬の見た目と気づきのサイン
ご家庭で気づきやすいサインは次のようなものです。
- 奥歯を噛んでも、上下の前歯のあいだに数ミリのすき間が残る
- 前歯で麺類や葉物野菜を噛み切れず、奥歯だけで食べている
- 口を閉じているつもりでも、自然と口がポカンと開いている
- 食事中にくちゃくちゃと音が出やすい
- 「サ・タ・ナ・ラ」行の発音で、舌が前に出るような話し方になる
「写真を撮ったときに前歯が見えない」「学校の歯科健診で噛み合わせを指摘された」といったきっかけで気づかれるご家族も多くいらっしゃいます。
開咬と他の噛み合わせの問題との違い
出っ歯(上顎前突)や受け口(反対咬合)が前後方向のずれであるのに対し、開咬は上下方向のすき間が特徴です。
前歯が前後に突出していなくても、上下の歯が垂直に噛み合わない場合は開咬に分類されます。
開咬は他の不正咬合と併発することもあり、出っ歯や叢生(歯の重なり)と同時に見られるケースも少なくありません。
噛み合わせの問題が複合している場合、治療の優先順位を検査・診断で見極める必要があります。
開咬が子供の日常生活に及ぼす影響
開咬は「見た目だけの問題」と捉えられがちですが、前歯が噛み合わないことで食事・発音・呼吸の3つの基本機能に影響が出やすい噛み合わせです。お子様自身は不便を言葉にしないこともあるので、ご家族が日常の様子から気づくことが、早めの対応につながります。
前歯で噛み切れないことによる食事への影響
前歯は本来、食べ物を「噛み切る」ための歯です。開咬があると、この役割が果たせず、奥歯だけで押しつぶしながら食べることになります。
- 食事に時間がかかる、食べこぼしが多い
- 噛み切れずに丸のみしてしまい、消化に負担がかかる
- 前歯で噛もうとして、無意識に舌で食べ物を押し出すような食べ方になる
こうした食べ方が癖になると、舌の使い方そのものが定着し、開咬を悪化させる方向に働きます。「なんとなく食べ方が雑」「クチャクチャ音が気になる」という違和感の裏に、噛み合わせの問題が隠れていることがあります。
発音への影響:サ行・タ行が聞き取りにくくなる
サ・タ・ナ・ラ行の音は、舌先を上の前歯の裏側に当てて発音します。前歯のあいだにすき間があると、この当てるべき場所がなく、舌が前に出て歯のあいだに入ってしまいます。特にサ行は舌先を上の前歯の裏に近づけて息を出す音であるため、前歯にすき間があると空気の流れが変わり、聞き取りにくくなりやすい傾向があります。
幼児期は発音そのものが発達途中なので、開咬があっても就学前後で自然に整うこともあります。一方で、小学校に上がっても発音の不明瞭さが続いている場合は、噛み合わせ側の原因が関わっている可能性があります。学校での音読・発表に影響することもあるため、気になる段階で一度相談していただくと、原因の切り分けがしやすくなります。
開咬と口呼吸との関係
開咬のあるお子様には、口がポカンと開いている、いわゆる口呼吸の癖が併存しやすい傾向があります。前歯のすき間から空気が漏れやすく、唇を閉じる筋力が弱くなりやすいことが背景にあります。
口呼吸が習慣になると、口の中が乾燥して虫歯や歯肉炎が起きやすくなり、舌の位置も下がります。下がった舌が下の前歯を内側から押すようになると、舌の癖と口呼吸が互いを強め合い、開咬がさらに後戻りしにくい形に固定されることがあります。「歯並びの問題」と「口の周りの筋肉の使い方の問題」を切り離さずに見ていくことが、開咬の治療では重要になります。
子供の開咬はなぜ起こるのか
開咬の原因は1つに絞れないことが多く、お子様の癖・生活習慣・骨格の成長方向が複合的に関わって生じます。原因を見極めずに装置だけで歯を動かしても、原因が残っていれば治療後に元の状態へ戻りやすくなるのが、開咬という噛み合わせの難しさです。
舌の癖(舌突出癖)が最も多い原因
子供の開咬で最も多く見られる原因は、舌で前歯を押す癖(舌突出癖)です。本来、ものを飲み込むときの舌は上顎の天井に持ち上がりますが、舌突出癖があると、飲み込むたびに舌先が前歯のあいだに入り込みます。1日に何百回と繰り返される嚥下のたびに前歯が押されることで、少しずつ上下の前歯が外側に開き、すき間が固定されていきます。
舌突出癖は、舌の筋力が弱い、舌の安静位置が低い、口呼吸で口が開きやすい、といった複数の要因と結びついて起こります。歯を並べる治療と並行して、舌の使い方そのものを整える必要があるのはこのためです。
指しゃぶりや口呼吸などの生活習慣
指しゃぶりは、長く続くと開咬や出っ歯の原因になる代表的な癖です。指を吸う力で上の前歯は前方へ押し出され、下の前歯は後ろ下方へと押さえつけられます。指を入れたままの状態が日常的に続くため、上下の前歯のあいだにすき間が残ったまま骨の成長が進んでしまいます。
中止時期の目安として、3歳までの指しゃぶりは歯並びへの影響が小さく無理にやめさせる必要はないものの、4歳を過ぎても続く場合は歯並びへの影響を見ていく必要があるとされています。4〜5歳頃までに指しゃぶりが落ち着けば、軽度の開咬は自然に整うことも多く、それを過ぎても続く場合は矯正治療を視野に入れて相談する段階に入ります。
口呼吸も、開咬の維持・悪化に深く関わる生活習慣です。鼻づまりが慢性化していると、口を開けて呼吸する状態が固定化し、唇を閉じる力・舌を上に上げる力が育ちません。耳鼻科的な問題が背景にある場合は、歯科だけで完結せず、耳鼻咽喉科で鼻の通りを確認してから矯正治療を進めるという流れが必要になることもあります。
骨格的な要因(下顎の成長方向)
癖や生活習慣だけでなく、下顎の成長方向が「下に開く」タイプのお子様は、開咬になりやすいという骨格的な要因もあります。下顎が前後ではなく下方向に伸びていくと、前歯の縦方向の重なりがどうしても浅くなります。
骨格要因が大きい場合は、癖を直しても前歯のすき間が完全には閉じないことがあります。混合歯列期(乳歯と永久歯が混ざっている時期)からの介入で骨の成長方向に少し働きかけることはできますが、永久歯が生え揃ってから骨格の問題が大きく残った場合は、外科的な矯正治療が選択肢になることもあります。
開咬の矯正は「癖ごと治す」ことで後戻りを防ぐ
開咬の治療で最も難しいのは「歯を動かすこと」ではなく、治療後の後戻りを防ぐことです。矯正装置で前歯を正しい位置に動かしても、舌の癖が残っていれば歯は再び開いてしまいます。
なぜ開咬は後戻りしやすいのか
矯正で前歯のすき間を閉じても、そのあと毎日繰り返される嚥下のたびに舌が前歯を押し続けたら、歯はまた少しずつ外側へ開いていきます。1日に飲み込む回数は、唾液を飲む動作も含めると数百回以上です。その都度わずかでも前歯に負荷がかかれば、年単位で見たときに後戻りが起きやすいのは想像しやすいと思います。
だからこそ、原因側の癖に手を入れる工程が大事になります。
MFT(口腔筋機能療法)を併用する理由
MFT(口腔筋機能療法)は、舌・唇・頬といった口の周りの筋肉の使い方を整えるためのトレーニングです。舌の正しい安静位置(上顎の天井に軽く触れている状態)、正しい飲み込み方、唇を閉じる筋力。こうした要素を、お子様自身が日常の中で身につけていけるように練習していきます。
開咬の治療でMFTを併用するのは、装置で歯を動かす治療と、癖を整える治療を並行して進めることで、装置を外したあとも噛み合わせが維持されやすくなるためです。歯科医院で月に1回程度トレーニングを行い、ご家庭でも数分ずつ続けていただく形が一般的です。
「寄り添う矯正」が開咬治療で求められる理由
開咬の治療は、装置の調整だけで完結しません。お子様自身が「舌をどこに置くか」「どう飲み込むか」を意識して変えていく、地道な日常習慣の積み重ねが必要になります。これは、お子様にとっては「言われた通りに装置をつける」よりも難しい作業です。
ですから、治療を進めるご家族と医院の関係そのものが、治療効果を左右する面があります。トレーニングがうまくいかない時期、装置を嫌がる時期、思うように癖が抜けない時期。そうした時期に、お子様を責める形ではなく一緒に振り返れる場であることが、長く続く治療では何より大切です。
子供の開咬矯正で使われる装置と治療の流れ
開咬の治療で使う装置は、お子様の年齢・歯の生え変わりの段階・骨格の成長方向によって変わります。「混合歯列期に行う治療(一期治療)」と「永久歯が生え揃ってから行う治療(二期治療)」の2段階で考えるのが一般的な流れです。
一期治療(混合歯列期)で使われる装置
混合歯列期(おおよそ6〜12歳ごろ)は、乳歯と永久歯が混ざって生えている時期です。顎の骨が成長中であることを利用して、骨格の成長方向に少し働きかけたり、舌や唇の癖を整えたりすることが、一期治療の目的になります。
主に使われる装置と役割は以下のとおりです。
| 装置名 | 役割 | 特徴 |
|---|---|---|
| タングクリブ | 舌が前歯のあいだに入るのを物理的にブロックする | 上顎の裏側に固定する柵状の装置 |
| プレオルソ | 舌・唇・頬の筋肉バランスを整え、顎の成長を誘導する | 就寝時と日中1〜2時間の装着 |
| 拡大装置 | 上顎の幅を広げ、舌が収まるスペースを確保する | ネジを回して少しずつ拡大する |
舌癖が主な原因であればタングクリブとMFTの併用が中心となり、骨格的な問題が大きい場合は拡大装置を組み合わせることがあります。
二期治療(永久歯列完成後)が必要になるケース
永久歯が生え揃った段階(おおよそ12〜14歳以降)でも前歯のすき間が残っている場合は、二期治療として大人の矯正と同様に1本ずつの歯を動かす治療(ワイヤー矯正やマウスピース矯正)が必要になります。一期治療で土台を整えたお子様でも、骨格の成長方向によっては二期治療まで必要になることはあります。
二期治療の判断は、永久歯がほぼ揃った時点で改めて検査をしてから行います。一期治療を経たお子様の場合、二期治療で動かす範囲が小さくて済む、トレーニングで舌の癖が整っている分後戻りしにくい、といったメリットがあり、成人になってからゼロから始める矯正治療に比べて治療期間や負担が軽くなることが期待できます。
治療開始のタイミングと通院の目安
開咬の相談は、お子様の乳歯と永久歯が混在し始める5〜6歳頃が適切な目安です。
この時期は顎の成長が活発なため、成長の力を利用した治療が行いやすく、将来的に抜歯や外科手術が必要になるリスクを低減できる可能性があります。
通院頻度は月1回程度で、装置の調整とMFTの進捗確認を行います。
一期治療の期間は個人差がありますが、一般的に1年半〜3年程度が目安です。成長の様子を見ながら柔軟に治療計画を調整していきます。
子供の開咬矯正にかかる費用の目安
小児矯正は基本的に自由診療で、健康保険の対象外です。費用がどう構成されているか、どこを確認すれば総額の見通しが立てやすいかをお伝えします。
一期治療と二期治療の費用構造
小児矯正の費用は、一期治療と二期治療で別々に発生するのが一般的です。
- 一期治療:20万〜40万円程度
- 二期治療:25万〜65万円程度
このほか、初回の精密検査・診断料として1万〜5万円程度、毎回の通院時の調整料として3,000〜5,000円程度が別途かかるのが一般的です。
治療後の保定装置(リテーナー)代として2万〜6万円程度が必要になる場合もあります。
クリニックによっては、治療開始から完了まですべてを含む「トータルフィー制」を採用しているところもあり、調整料や保定装置代が総額に含まれるかは事前に確認しておくべきポイントです。
費用を抑えるために確認しておくこと
小児矯正の費用は医療費控除の対象になります。
医療費控除では、1年間(1月1日〜12月31日)に世帯で支払った医療費の合計から「10万円(総所得金額等が200万円未満の方は総所得金額等の5%)」を引いた金額が控除対象になります。家族の医療費は合算でき、通院の公共交通機関の交通費も対象です。
確定申告は治療を受けた年から5年以内であれば後からでも申告できるため、領収書は治療途中のものも含めて保管しておきましょう。
また、一期治療と二期治療のそれぞれで、どのような追加費用が発生する可能性があるかも確認しておきましょう。調整料、保定装置の費用などは、初めの見積もりには含まれていないケースが多くあります。
まとめ
子供の開咬は、見た目だけの問題ではなく、食事・発音・呼吸といった日常の機能に関わる噛み合わせです。多くは舌の癖・指しゃぶり・口呼吸といった生活習慣と、下顎の成長方向が組み合わさって生じます。
「前歯が閉じない」「発音が気になる」「ポカン口が続いている」といったサインに気づいたら、矯正歯科で一度噛み合わせを見てもらうと、今すぐ始める必要があるか、もう少し経過を見てよいかの判断がつきやすくなります。
矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前では、初回のご相談を無料で承っています。お子様の癖や生活習慣、ご家族のご希望を伺いながら、一人ひとりに合った進め方をご提案します。気になった時点で、まずは無料相談にお越しください。
記事監修者

矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前
院長 三木善樹
大学病院で培った治療と予防の経験を地域の皆様にお届けしていきたいと考えております。矯正治療は長い時間をかけて歯並びを整える治療です。治療期間を通じて信頼できるパートナーとして寄り添えるよう、スタッフ一同努めてまいります。
- 経歴
- 1993年:徳島大学歯学部 卒業
- 1997年:徳島大学大学院歯学研究科 修了
- 1997年:徳島大学歯学部 矯正学講座 助手
- 2004年:札幌医科大学医学部 口腔外科学講座 助手
- 2007年:札幌医科大学医学部 口腔外科学講座 助教
- 2022年:矯正歯科・口腔ケアクリニック知事公館前 院長
- 所属学会
- 日本矯正歯科学会 認定医
- 日本口腔外科学会
- 日本顎変形症学会
- 日本口蓋裂学会
- 日本顎関節学会
- 北海道矯正歯科学会
- 日本骨代謝学会
- 歯科臨床研修医指導医
【小児矯正に関する重要事項】
小児矯正(自由診療)は公的医療保険が適用されない自由診療です。なお、顎変形症と診断される症例の外科矯正は保険適用となります。
- 治療内容:お子様の歯並びや顎の成長段階に合わせた装置(拡大装置・機能的矯正装置・固定式矯正装置等)を用いた矯正治療
- 治療期間・回数:混合歯列期からの一期治療は1〜3年程度、永久歯がそろってからの二期治療を含めると数年単位の通院が必要(個人差あり)
- 費用の目安:治療費 500,000円(税込)に施術管理料・セラミックブラケット・保定装置料を包括。検査料 70,000円・診断料 30,000円・調整料毎月6,000円(税込)が別途。追加装置を使用する場合はリンガルアーチ 35,000円・拡大装置 45,000円(税込)等の費用がかかる場合があります。クリニックによって異なります。
- リスク・副作用:歯の動きには個人差があり計画通りに進まないことがある、装置による違和感・痛み・口内炎、装置の脱離や破損、虫歯・歯肉炎のリスクが上がる、抜歯を伴う場合は抜歯部位の痛みや腫れ、後戻り、まれに歯根吸収が生じることがある
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